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1:SideM×シンデレラガールズSS:2015/10/31(土) 22:19:09.65 ID:y+PfDi/u0


九十九一希




大通りの喧騒から離れ、一人路地裏で額に手を当てる。

雑踏は苦手である。

木々の音や川のせせらぎと違い、人々が織り成す騒がしさは小規模な感情があちこちで弾けていて、落ち着かない。



一希(だらしがないな……涼や大吾にまた心配をかける……)


とりあえず2人にはもう少し一人で散策すると伝えておく。


いっそのこと人々ではなく、亡者の群れが怪しい呪文や冥界へ連れ込む甘言でも吐いていると思いこんだ方がまだ落ち着けるかもしれない。


ハロウィン・フェスタ。

道行く人がみんな仮装をしているこの状況なら、違う世界に想いを馳せて視点をずらすのも容易だろう。


陽気なジャック・オ・ランタン。パフォーマーのピエロ。小さな魔女に、生き生きと駆けまわるあり方が矛盾した亡者たち――多種多様な化物、魔物、亡者、幽霊の集い。


一希(ゴースト、か……顔色が悪い今のおれもまた、ゴーストに見えるだろうか?)


靄のような想いが脳裏に湧いて、頭を振ってそれを振り払う。

今のおれは……作家だった父のゴーストライターなんかじゃない。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1446297549
2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:21:13.54 ID:y+PfDi/u0


大通りへ戻ろうと足を向ける。



一希(……ん?)




「――あ、あの……しらないなら、そ、それで…………ありがとうございました……さ、さよなら……」

「まあ待てって! よく分からんけど、はぐれたんならいっしょに探したげるからさ! そんでさ、キミいくつ?」

「名前なんて言うの? ていうかカワイイじゃん、ちょっと包帯取って顔はっきり見せてよ」


小柄なマミーと顔面流血者2人――もとい、小柄な少女と男が2人。

少女の方の仮装は凝っているが、男たちの方は安易に赤い絵の具を額に垂らしただけにも見える。


「え……だ、だめ……!」

「あー! いーじゃんいーじゃん! 撮っていい?」

「あれ? どっかで見たことある気がする……」



一希「……」



「と、撮らないで……えっと……えと……の、呪われる、から……危ないから……」

「役作りがんばってんね~」

「一枚だけだから! ね! いいじゃんハロウィンのいい思い出にしたいんだって。お礼にオゴるよ? ちょっと大人な店とか興味ある?」

「あの……うぅ……」


一希(……騒がしい)
3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:22:21.52 ID:y+PfDi/u0

人ならざるものが闊歩していると設定しようとしたのに、下世話な言葉ばかり使われてはイメージが台無しだ。

近づいて声を掛ける。



一希「そこにいたのか。探したぞ」


少女「え……?」


一希「さあみんなの所に帰ろう」


「は?」

「え、誰あんた」


割って入ったおれに2人の男が訝しげな目を向ける。


一希「ああ、この子の知り合いです。すいませんがもう行かなくてはいけないので、失礼します」

少女「え、え……?」


彼女に向き直る。

互いの左目と右目が重なり合う。――互いに片方の目は髪で隠していたからこうなった。


一希(話を合わせるんだ)

少女(あ……!)


少女「ごめんなさい、これでし、失礼……します……!」


「あ、ちょっと……!」


振り返らない。少女の手を引き大通りへ。
4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:23:32.53 ID:y+PfDi/u0

――

――――



一希「迷惑だったか……? 絡まれているように見えたから」

少女「ううん……助かりました……あ、ありがとう……」

一希「そうか……」


少女「……」

一希「……」


一希「じゃあ……気をつけて」

少女「あ、あの……」

一希「なにか?」

少女「私、あの子を……さがしてるんです……」


――と、片目を隠した少女は言った。

彼女の顔に浮かんでいるのは、恐怖に慄いている絶望的な表情で。

それはまるでホラー映画のワンシーンのようだった。


一希(この子は――)

小梅「この……バレンタインフェスタで……い、いなく……なっ、ちゃった、の……! 見てない……ですか……」



白坂小梅

5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:24:25.63 ID:y+PfDi/u0

――

――――

――――――





芳乃「むむー……」

芳乃「…………これはーなんともはやー……」

芳乃「いえー、悪気が渦巻く季節の節目ゆえー……このような災いが起こるのは仕方のないさだめと言うべきやもー……」


芳乃「……あの方の悪気を平らげてー、皆みなさまに安らかなる心を取り戻すのでしてー」








依田芳乃

6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:25:46.68 ID:y+PfDi/u0


秋月涼


兜大吾




大吾「先生まだ散策続けるそうじゃのー。そんならワシらももうちょっと歩き回って楽しんどこか?」

涼「そうだね。ステージの開場にもまだ時間あるし。……でも一希さん僕たちに心配かけないように散策するなんて言ってるかもしれないから心配だなぁ……」

大吾「あー、先生、人ごみに弱いからのー……じゃが、心配し過ぎても先生嫌じゃろ。ここはそっとしといたるのが男の心意気と違うか?」

涼「男の……!! そうだね! 一希さんの気遣いには応えないとだよね! 男として!」

大吾「はっは! なんじゃ涼、男って言葉に食いつきおって」

涼「えっ!? あー、食いついたわけじゃ……」

大吾「まぁ、本当にワシらの助けが欲しい時は先生も召集かけよるじゃろー。それまで先生をビックリさせるイタズラでも考えとこうか」

涼「……あはは、大吾くんたら。でもそうだね。一希さんにもハロウィン楽しんでもらいたいし――っと」

大吾「どしたケータイ取り出して。また先生からか?」

涼「ううん。絵理ちゃん……友達から。わっ、本格的な魔女の格好してる! あはは、こういう画像送られてくるのってハロウィンならではだね」

大吾「ほー! みんな楽しんでるようでなによりじゃの! やっぱお祭り騒ぎは、みーんなはなまる笑顔じゃないとのぉー」

涼「うん。やっぱり楽しまなきゃね!」
7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:28:50.93 ID:y+PfDi/u0

涼(でも、絵理ちゃんから聞いたけど今日のハロウィンフェスタって変な事件も起こってるらしいんだっけ)

涼(朝から仮装して街を練り歩いていたら、友達の女の子がいなくなったって。拡散希望ってタグがついた『友達を探しています』ってつぶやきが何件も出てるって)



絵理『“出会い”を求めてナンパ目的にこうしたイベントに来る人もいるから……気をつけて。涼さん……かっこよくなったけど……まだかわいい?』



涼(ぎゃおおおん……絵理ちゃん、でもそれはないよー!)


水谷絵理



涼「ふぅー、こうなったらステージで男らしいとこ見せてビックリさせるからね!」

大吾「どしたんじゃ涼?」

涼「大吾くん、ライブがんばろうね!」

大吾「お、おう? まぁ、ひとまず英気を養うとしよか。ライブで元気ぜーんぶぶつけるために」






「――すいません、友達を探しているんですけれどどこかで見かけなかったですか!」



「――どこ行ったんだろ、もう……3時間も連絡とれなくて疲れた……」




大吾「……笑顔とちごうとる人もチラホラ見るしの。なんじゃ、さっきからあの姉さん達、ずっと人探しとるみたいじゃ。財布なくなったちゅう人もさっき見たが……」

涼「うん……仮装した人が溢れかえってるから逸れちゃったのかな……?」
8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:32:34.17 ID:y+PfDi/u0

大吾「涼はワシから離れんといてくれよ?」

涼「うん、大吾くんも」

大吾「わかっとる。バケモン盛りだくさんじゃけえのー。こんなとこに涼は一人にせんよ」

涼「うっ、確かにオバケは苦手だけど! 大丈夫だから! これでも幽霊屋敷を調査した事だってあるんだからっ」

大吾「ほー! 流石涼じゃ! ほんなら幽霊が襲ってきたら守ってもらおうかのー」

涼「え? あ、でもあれは絵理ちゃんといっしょにやってて……」


キリオ「ひゅ~どろどろ~! 化け猫でにゃ~んすっ!」ヌッ


涼「ぎゃおおおんっっ!!?」

大吾「うおっ!? なんじゃビックリした! ……ってアンタは」


キリオ「化け猫柳キリオでにゃ~んすっ! これはこれは“ふらっぐす”のお二人さん! 奇遇でにゃんすね~」

涼「彩のキリオさん……びっくりしましたよぉ、もぅ~!」

大吾「このハロウィンフェスタに来とったんか」

キリオ「魑魅魍魎の百鬼夜行! 化け猫として見逃すわけにはいかないでにゃんすからね~! ぜーはー!」

涼「でもどうしたんですか? 息切れちゃってますけど……?」

キリオ「いやー、ワガハイ、実のところ今逃走中の身で現世をさまよっている最中でありまして。ぜはー、えねるぎーをホキュウせねばと思い、お二方に声をかけた次第でにゃんして」

大吾「逃走? なんじゃ鉄砲玉にでも追われとるんか?」

涼「それでエネルギー補給って……」

キリオ「お菓子とか飲み物をお恵みくださると感謝感激雨あられ」

涼「お菓子ですか? よく分かりませんけど、お菓子なら持ってます。えっと……良かったら食べますか?」



猫柳キリオ

9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:34:50.47 ID:y+PfDi/u0


キリオ「おおっ! ありがたや~! うれしいでにゃんす~! これでまた――」



芳乃「おやー、こんなところにおいででしてー」ヒョコ



涼「えっ?」

キリオ「にゃっ!? 出たでにゃんすな! おにんぎょうさん!!」

芳乃「そなたの悪気を祓わねばー、皆みな安らかになること叶わずー。どうかこの癒しの御手をおとりにー」

キリオ「イヤでにゃんす! この身に送られた宇宙ぱわ~は渡せないでにゃんす! というかワガハイは潔白であるからして!」

芳乃「化け猫の悪果はすでにこの地を覆い始めておりー、その荒ぶる御心を静ませたくー」

キリオ「そりゃ今のワガハイはふりふりしっぽの化け猫も~どでにゃんすけど。まだ今日は“とりっくおあとり~と”も言ってないでにゃんすっ」

芳乃「私はそなたに纏われている悪気をー溶かしてさしあげたいと思っているのでー」

キリオ「むむむ……! おにんぎょうさん、いつもワガハイの宇宙ぱわーを祓おうとしてるでにゃんすが、今日はいつになくホンキでにゃんすね~!」

芳乃「でしてー。わたくしはこの地に悪気をめぐらせたくはなくー。大事なのはそなたとそなたの内なる悪気をー誠の心のもとにて分かつことでしてー」

キリオ「悋気(りんき)は女のつつしむトコロ、疝気(せんき)は男の苦しむトコロ! 女の執念は恐ろしいでにゃんす! ――然らばこれにてごめん!」ダッ!

芳乃「むー?」


大吾「お、また逃げよった」

芳乃「これー。お待ちをーお待ちったらー。ねーねー……」トトト

10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:35:17.44 ID:y+PfDi/u0

涼「2人とも行っちゃった……」

大吾「なんなんじゃ一体? なに話しとったんかワケわからんかった」



涼「キリオさんを追いかけた人、確か依田芳乃さんだったよね。アイドルの」

大吾「他の事務所のアイドルに因縁つけられとるんかの? しかし悪気とか祓うとか言っとったし……」

涼「なんかほっとけないね。僕たちも追いかけてみようか?」

大吾「ほうじゃのー。ようわからんけど仲間が困っとるようなら助けんと」

涼「うん。行こう!」




――『化け猫の悪果はすでにこの地を覆い始めておりー……』



涼(化け猫が……ここを覆い始めてるってなんだろう? 悪いことがここで起こってるってことなのかな)

涼(悪いこと。友達とはぐれた人がいるけどそういうのかな。誰かと離れ離れになること――)



涼(…………やっぱり一希さんと早いうちに合流した方がいいかな)
11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:37:06.57 ID:y+PfDi/u0

――

――――




一希「……話を聴く限り。はぐれた友人を探しているということで合っているか?」

小梅「合ってる……姿が……見えないの……あ、でもね……す、姿が見えないのは普段からで……でも、私には見えてて……そ、それが、今は本当に見えなくなってて……ど、どこかに行っちゃってるんだと、お、思うんですけど……

一希「…………いつも見えないのか」

小梅「は、はい。あ、いいえ。わ、私には、見えるの……」

一希「………………それが今は本当に見えない」

小梅「うん……」


一希「………………」


一希「………………………………」



一希「――なるほど。言わんとするところは……わかったよ。……しかし、おれだって見えるわけじゃない。君の言う“あの子”を見てはいない」

小梅「そ、そう、ですか……」

一希「……誰が『目撃』できるかまではハッキリ分からないから、片っぱしから歩き回って、聞いて回って探すしかなかったんだな……呼びかけることはできないのか」

小梅「できる……あ、や、できてると思ってた……あの子ね……いつも私のお願いを、聞いてくれる時は……そばにいてくれたから……」

一希「……いつもと『いない感じ』が違うんだな」

小梅「うん、そ、そう……そう、なの……」

一希「……あの子は神出鬼没なんだろう。ひょっこり帰ってくるということはないのか?」

小梅「……あ……あのね、あのね……今日は、いつもと違うの……!」

一希「違う?」

小梅「む、むしろ還っちゃう気がするって言うか……か、帰ってこない感じがするの……!」
12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:37:54.54 ID:y+PfDi/u0

一希「……?」

小梅「今日ね、ここのフェスタね……! ぞくぞくするっていうか……ぴりぴりするっていうか……バラバラ殺人の予感がするっていうか……な、なんだか、怖い、空気なの……あ、なんです……」

一希「このハロウィンフェスタがか?」

小梅「わ、私、仲間のみんなと、来たんだけど、人混みが苦手で……ちょっと、人の流れから、でたら……逸れちゃって……」

一希「人混みは……おれも苦手だ」

小梅「うん……一人だと、くたくた、になっちゃいます……」

一希「……ああ」

小梅「はい……」

一希「それで……」

小梅「わ、私の、せいなの……連絡とり合えば……合流は、すぐに、できた、の、に」

一希「……?」

小梅「でも……ここすごく怪しい空気、漂ってて……ふ、普段はそういうゴシックホラーなの好きなんだけど……い、いなくなった人がいるとか、そういうの、聞いてた、か、ら」

一希「……」

小梅「涼さんや輝子ちゃんが、いなくなったら、……なんだかホラーみたいで、ほんのちょっと、楽しそうだけど……それでも、やっぱり、会えないのはイヤだから……わたし、お願いしたの……」



小梅「『涼さん達を探して、ついててくれる?』って……あの子に、お願い、したの……しちゃった、の」
14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:40:36.12 ID:y+PfDi/u0



一希「そう……だったか。君が……頼んだんだな」

小梅「まさか……あ、あの子がいなくなっちゃうなんて、お、思わなかったの……! 全然、考えて、なくて……」



一希(奇妙な会話だったが、わかったことがあった)

一希(初対面のおれに、たどたどしくいきさつを話す少女。そこに現れていたのは……切迫さ)

一希(この少女は本気で『あの子』なる存在を探している。そして――本心から『あの子』のことを心配し、悔いている)



『いない者』が、いなくなった。

それを気付き、慮ることができる人がどれだけいるか。




一希「捜索……手伝おうか」



15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:43:52.97 ID:y+PfDi/u0

――

――――





涼「ええっと……どこに行ったのかな」

大吾「仮装しとる人であふれ返っとるからのー。あのにゃんこ先生はいつもはあの格好とテンションで見つけやすいんじゃが、今日ばっかりは周りに溶け込んでしもうとるの」

涼「うーん……エネルギー補給したいって言ってたから、お菓子貰えるところに行ったかもしれないね」

大吾「そんなら、あの菓子屋の前とかにおらんかのぉー。ほら、無料で小さいお菓子配っとるみたいじゃけえ」

涼「あ、そうだね。行ってみよう……すごく混んでるけど」

大吾「はっは! ワシはまたこのカボチャマスク被っていくわ」スホッ゚





――……



「トリック・オア・トリート!!」

「お菓子ちょーだ―いっ!!」



涼「わぁ、ぎゅうぎゅうだ……! キリオさん、いた?」

大吾「み、見つからんの……というか予想以上にキツキツじゃー」
16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:45:40.86 ID:y+PfDi/u0

涼「そうだね――ってわっ!」


――ドン!


九郎「こ、これは失礼致しました……」

涼「あ、いえ。混んでるからしかたないですよ」


涼「え?」

九郎「むっ?」


翔真「おやァ? あんたたちは……」

大吾「あ! なんじゃなんじゃ! 彩の二人か!?」














翔真「そォ。あんたたちもボーヤを探してくれてたのね。アタシたちも目下捜索中でね」

涼「そうでしたか……」

九郎「お菓子を頂ける場所ならば、きっと出没しているのではないかと思ったのですが……いませんでしたね」

大吾「ワシら同じこと考えとったわけか」
17:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:49:30.92 ID:y+PfDi/u0

翔真「あのお嬢ちゃん、ボーヤに御執心みたいだしねェ。撒くのに難儀してるのかしら」

涼「あの、キリオさんどうして逃げているんですか? というか、なんで追いかけられているんですか?」

翔真「んー。よくわからないのよね。それが」

九郎「猫柳さん、朝からこのハロウィンフェスタにネタ探しの宝庫だから行こう行こうと私たちを誘ってきまして……」

翔真「根負けして、仮装までしてこのフェスタに来たわけなのよ。まぁどうせなら踊る阿呆の方が楽しいからアタシは賛成したんだけどね」

大吾「それにしても気合い入っとる衣装じゃのー。角に鉈とか、鬼の風情がよう出とる!」

九郎「おほめいただきどうも……前にいただいた肝試しの時の衣装が残っていたので」

大吾「姐さんの方は、なんじゃそれ?」

涼「姐さんじゃないよ! 大吾くん!」

翔真「あっはは! 女形なんだしそう呼んでも別にいいわよォ。アタシは西遊記の沙悟浄よ。まぁ河童みたいなもんね。弁天よりかはこっちのがまだハロウィンに合ってるでしょ。ボーヤは孫悟空の格好しなかったけど」

涼「キリオさんは化け猫でしたね」

九郎「そう、なのです。化け猫の格好をしていたからなのでしょうか……。現れた依田芳乃さんに『化け猫の悪気を封ずる』と言われ、猫柳さんは追われたのです」

大吾「化け猫のぉ……やっぱ、よーわからん」
18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:50:34.95 ID:y+PfDi/u0

涼「芳乃さん、言ってました。化け猫の悪い気かなんかが……ここを覆い始めているって」

翔真「アタシらもそれっぽい文句聞いたわねぇ。ボーヤ自身、ここに来たら『なんだかゾワリゾワリなおかしな感じがするでにゃんす~!』とか言ってたわ」

大吾「そりゃ落語らしく“お菓子”と“おかしい”でも掛けてそう言ったってことじゃーないんか?」

九郎「どうでしょう。普段から猫柳さんの言動は奇矯極まるものですから……しかし、経験則から言えば、猫柳さんこの場の雰囲気を本当に奇妙だと感じておられたように思いますね」

涼「奇妙な感じ、ですか……? えーっと、じゃあ、芳乃さんはここの悪い気かなんかを抑えようと思ってキリオさんを追っている……って、ことでいいのかなぁ?」

翔真「キリオちゃんに悪い気ねェ……誤解だと思うけど」

九郎「ともかく騒動の元になりますし、猫柳さんと合流し、依田さんとの間を仲裁しなければなりません」

大吾「じゃけん、今どこにおるかわからんのじゃろ? どうすんじゃ」

翔真「そうさね、逃げてる途中で連絡とるヒマもないみたいだし、いっそ待ってみようかしらねェ……一際騒がしいコがいたらそれが多分ボーヤ」

九郎「妙な判別方法ですね……納得できることもまたおかしなことですが」

涼「あ、あはは……それじゃあ、人の多いところで見張ってましょうか?」

翔真「そうしましょ」

九郎「申し訳ありません、猫柳さんのことでご迷惑をおかけします」

大吾「ユニットの仲間が心配な気持ちはわかるけぇー、気にせんでもえーよ!」
19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:55:47.54 ID:y+PfDi/u0



……



大通り


ガヤガヤ ワイワイ



大吾「うーん。おらへんのぉー」

翔真「――しっかし、ハロウィンっていうのは皆が皆かぶいてて壮観だねぇ」

九郎「亡者が現世に現れる……日本で言うお盆の様なものでしょうか」

翔真「九郎ちゃん大丈夫かい? オバケとか苦手なんじゃなかったかしら?」

九郎「し、心配無用です! 恐れることなど、なにも」

涼「オバケは僕も……」




「――こわくないにゃ!」




大吾「ん?」





みく「み、みくだって、今はアヤしい猫チャンだから! 化け猫なんかにビビったりしないの!」

キリオ「ほほ~、でしたら同類相哀れんでここからワガハイを逃がしてくれるとか?」

みく「え……うーん。だめーっ! 芳乃チャンがキリオクンを探してるの、なんか悪いコトしたからでしょー?」

歌鈴「あの……悪いコトというよりは、邪なる気が纏われているってことで……」

みく「みくは、ちょ、ちょっとそういうオカルト、わからないんで……」


前川みく


道明寺歌鈴

20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 22:56:51.60 ID:y+PfDi/u0


涼「あっ、あそこにいるの――!」

翔真「キリオちゃんね!」




キリオ「ワガハイ、悪気(わるぎ)はないでにゃんす! あるのは稚気と好奇心! 鬼に横道なきものを~でにゃんす! そこな巫女さん!」

歌鈴「はえっ!?」

キリオ「ワガハイの目をじっとご覧になるでにゃんす! このピカピカおめめ! どこに邪心があるというでにゃんす! さぁさぁ!」

歌鈴「え、え~」

キリオ「じじじ~!」

歌鈴「う、うぅ……」ジィー


歌鈴「う~ん……でも、わ、私じゃ……正確な判断ができないので、芳乃さんが来てから……」

キリオ「ほりゃ! 猫だまし!」バチィィン!!!


歌鈴「ひゃああ!?」

みく「にゃっ!?」


キリオ「御無礼! 南無三! 三十六計逃げるに如かず~!!」ダダダッ

みく「あーっ! また逃げたーっ!! ――って歌鈴チャン! しっかりするにゃ! ひっくり返ってないで!」

歌鈴「はらひれほれひれ~……」
21:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/10/31(土) 23:07:32.64 ID:y+PfDi/u0

キリオ「オタスケ、オタスケー!!」タタタタターッ


がっし!


キリオ「にゃっ!?」

翔真「はい、ボーヤ捕まえた」

九郎「……なにをしてるんですか、あなたは」

キリオ「おお! ちょうちょサン! くろークン! 地獄に仏でにゃんす!」





みく「よ、芳乃チャン!」

芳乃「おやー歌鈴殿、腰が抜けてしまわれておいででー、気付けをいたしましょー。てやー」ペチン

歌鈴「――はっ!? え、私……」

みく「歌鈴チャン、復活! 芳乃チャン、キリオクンはあっちにゃ!」

芳乃「ええー。探し人は私の瞳にはっきりとー」




キリオ「ひょええ、芳乃嬢しゅーらいっ! くろークン、オタスケ―!」

九郎「――いえ。依田さんと話にいきましょう」

キリオ「にゃっ!?」

九郎「事情はよく分かりませんが、モめているのならまず心を静謐にし、話し合うべきです」

キリオ「ひゃー!? えすお~えすでにゃんす~!」

翔真「悪いことしてないんでしょォ? なら逃げることないわよ」
28:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 18:59:40.16 ID:nmKq4XR30





芳乃「キリオ殿ー、こちらへ参られませー」フリフリ


九郎「さあ行きますよ。誤解があるなら解きましょう」

キリオ「まな板の上の鯉わが身の定めを憂うなり、でにゃんす」


大吾「なにされるんじゃ、一体。ちぃっと楽しみじゃの」

涼「大吾くん、ちょっと失礼じゃないかなぁ……?」



歌鈴「あっ、あなた達は315プロの……!」

翔真「どーも、こんにちわ♪」

みく「あーっ!秋月涼チャン!? こんなところに!?」

涼「あ、はい! おはようございます。あのでも、少し声を抑えてくれると……」

みく「にゃっ!? ゴメン。アイドルだもんね涼チャン。……あ、でも今は涼クンだっけ」

涼「そうです。僕、男です。僕のコト知ってくれてたんですね」

みく「そりゃあ、看板とかにデカデカと載ってたし……。うー、本当に男だったなんて。正統派のカワイイ系アイドルで目標の一人にしてたのに……」

大吾「涼は女からも憧れられるくらいかわいかったんじゃの!」

涼「……あは、は」
29:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:00:56.64 ID:nmKq4XR30

翔真「ねえ、なんであなた達はボーヤを追ってたワケ?」

歌鈴「え、あぁ、はい! ええっと芳乃さんから説明は……」

翔真「あのコはすぐにボーヤを追いかけていっちゃたから聞いてないわ」

歌鈴「えぇ! そ、そうでしたか……! すいません、説明が必要ですよね! あ、あのですね、その芳乃さんが言うには今日のこのフェスタは、怪しげな気が渦巻いてるってことでして……」

大吾「そんなこと言うとったな」

歌鈴「『人に害をなす魍魎(もうりょう)が生まれ出ずるはこんな時』だということでして、芳乃さんそんな悪い気を鎮めようとこのフェスタに来たんです」

九郎「……なにかの神事の話でしょうか? 鬼を祓う節分のような?」

歌鈴「えーっと、ま、まぁ……それに近いかもしれません」

翔真「不思議な話ねェ……ま、ようするに芳乃ちゃんはお祓いみたいなのしに来たワケだね。世に平穏をもたらすために。……で、猫柳キリオがそれに何の関係があるんだい?」

歌鈴「それは……えーっとえーっと……」

大吾(この姉ちゃんもようわかっとらんのじゃないか?)


みく「悪い猫チャンが出てきそうだからって、言ってたかにゃ? ……みくもこんな話はちょっとニガテだけど」

歌鈴「そうですね。悪い猫、魍魎……化け猫が出てくるのは、キリオさんが……なんやかんやで原因になってるからだって」

大吾「ちぃと待っとくれ、なんやかんやってなんじゃ!?」

歌鈴「ひょええ、そ、そこらへんは、私にもよくわからないんです~! 私はあくまでお祓いのサポートをしてくださいってことで呼ばれただけで~!」

翔真「そうだったのかい……。こっからは芳乃ちゃんに聞いた方がよさそうねェ。聞いても理解できるかどうかは別として」

涼「うぅ、なんか怖い話になってきたなぁ……」
30:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:02:17.61 ID:nmKq4XR30

みく「そうそう、芳乃チャンは――?」クルッ



芳乃「しずまれませー。ひーふーみーよーいーむー」クルクル

キリオ「にゃにゃ~ぐぇ~」

芳乃「みかなぎの舞でしてー。けがれを祓いーたちどころに大地も心地も清らかにー」クルクル




みく「……」

九郎「……」

涼「……」

大吾「なんじゃあれ」

翔真「ボーヤの周りを擦り足でステップ踏みながら踊ってる……うん、ダンスだねダンスよあれ」

歌鈴「……芳乃さん。お祓いを……」

九郎「往来でなにをしているんですか……」

歌鈴「は、ハロウィンで幸いでしたね! まだ周囲から浮きません……」

翔真「判然としないけど、芳乃ちゃんがボーヤの悪いの祓ったらそれで事は収まるのかしら」

みく「うー……恥ずかし……やっぱ小梅ちゃん達の方といっしょに行った方が良かったかも……」


キリオ「にょええぇ~~……ね、ワガハイもいっしょにすてっぷ踏んだ方がよろしいのでは?」

芳乃「いえー、そなたの妖しき気のみを祓えばよろしくー、心静かにしていただければー」
31:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:03:13.60 ID:nmKq4XR30


キリオ「ワガハイ、悪いコトなんてしてないでにゃんすよ?」

芳乃「でしてー。わたくしはそなたに憑いている、この地に跳梁する魍魎こそを祓いたくー」

キリオ「待った! 宇宙のぱわーはびびっと落ちてくるものなれば! ワガハイはきゅぴぴぴ~んっと受信するのみでありまして! 今ここでチョーリョ―とかボーソーとか、まったくしてないでにゃんすよ~!」

芳乃「むー……? しかし化け猫の気配は確かにこの地に満ちておりー……」

キリオ「きっとそれは別人! や! 別猫チャンでありましょうや!」

芳乃「はてー? そう言われますとー……」



みく「ね、ねー! 芳乃チャン終わったのかにゃ? なら早く行こう? なんか、おまわりさんも来てるから!」

大吾「待ったろうや。サツ……おっほん! 警察は警戒に来とるだけじゃろ。人ようけ集まっとるけん」



「――朝から多くのいっしょに来ていたという友人とはぐれたとの通報を受けております!」

「――これからますます混雑するので、ちゃんと家族・友人が周りにいるか確認をするようにしてくださーい!」



涼「あ、やっぱり警察の方にも連絡いってるんだ。人がいなくなったって……」



芳乃「そなたー」

キリオ「はて?」

芳乃「人をさらいたいという想いは感じましてー?」

キリオ「どちらかとゆーと爆笑の渦に巻き込みたいでにゃんす!」

芳乃「ほー……まるで化け猫の御霊に引っ張られてはおられずー、暖かな、跳ねまわる気を感じましてー」
32:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:05:11.99 ID:nmKq4XR30

芳乃「ふむー、舞にもなんら乱れずにおられたようでー、この度はそなたが因となっているのではないのかもしれませぬー」

キリオ「ワガハイはケッパクでにゃんす! いたずらはこれからするでにゃんす!」

芳乃「誠の心の言葉であられましたのねー。信じるに足ると感じますー」





芳乃「みなさまー」

歌鈴「あ、終わったんですか?」

みく「良かったにゃ! 悪い気っていうの無くなったんでしょ~?」

芳乃「いえー、化け猫と言えばキリオ殿とわたくし思ったのですがー、どうやら違うようでしてー」

歌鈴「はい?」

芳乃「おそらくはー、また異なる存在がー、この地に禍をもたらしているものと思われますー」

みく「え!? キリオクンは!?」

芳乃「人違いをいたしましてー、キリオ殿とその気が禍を振り撒いてはおられなかったのですー」

九郎「え、人違い……!?」

翔真「なんだい、つまり、ええと、ボーヤは悪くなかったってことかい?」

芳乃「でしてー」

33:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:06:39.01 ID:nmKq4XR30


キリオ「もーぅ、おにんぎょうサン! そう言ってたでにゃんしょ~? はい、反省でにゃんす!」

芳乃「申し訳なくー、どうか乱された心が和ぐよう、わたくしそなたの御心に沿うよう尽力をー」

キリオ「んー、ぷりてぃさが足りないでにゃんすね!」

芳乃「はてー? ぷりてぃー?」

キリオ「然り! もーちょっとゴメンナサイにも、ゆ~もあある愛嬌さが欲しいでにゃんすね~!」

九郎「猫柳さん、なにを」

芳乃「ほー。愛嬌とはー、なるほどーこれもまた一興でしてー。では、かの言葉をー」

みく「芳乃チャンなにもノらなくても」


芳乃「ご主人様ー、そそうをいたしましたーお許しをー」ペコー

みく「ぶっ!? そんなメイドモードの菜々チャンみたいな言い回しを!」

芳乃「わたくしもメイドの心得がございましてー。許してにゃん、でしてー」

みく「それはメイドじゃないにゃ! みくのキャラにゃ! あ、いやキャラじゃないけど!」

翔真「あっはっは! おもしろいねえ、それに可憐! ボーヤこりゃあ手打ちにしなきゃだねェ」

キリオ「ぐぬぬー! 受けをとられたでにゃんす……! そのネタいただくでにゃんす!」

九郎「なにを悔しがっているんですか……」

キリオ「ワガハイ、理由(ワケ)あってアイドルでにゃんすけど、これでも落語家のはしくれー! 表現者として! 創作者として! 研鑽は忘れないでにゃんすよ~!」


大吾「にぎやかでええのう」
34:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:08:02.73 ID:nmKq4XR30


――……






一希「…………」

小梅「…………」


一希「………………いたか」

小梅「……ううん…………気配も感じない、です……」


一希「そうか…………」

小梅「……うん…………でも、諦めない…………」



一希「…………なら、また別の場所をあたってみよう」

小梅「…………うん」



一希(お互いに口数が多くはないから……静かだな)


雑踏を避けて歩いているから、賑々しさも遠くなっている。

見えない存在であるという『あの子』。人がいない所の方がまだ見つかりやすいというのはわかる。

しかしだからといって、路地裏に一人で行くのはやはり中々に物騒なことだと思われた。


一希(自分の身よりも、友達だという『あの子』のことで頭がいっぱいなのか)
35:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:09:59.04 ID:nmKq4XR30


一希(例え儚くとも、普通の人には見えなくとも、認識する者がいた時点でそれは『在る』ものとなる)

一希(それぞれの世界観で人は生きている)

一希(自身の発信ができないもの。語られることによってのみ、その存在の断片が知れるもの)

一希(それをこの子は全部受け止めたのだろうか。だからこんなに必死になっているのか?)

一希(自分しか『いなくなった』ことに気づけないから――)



小梅「あ……ま、まって……ください……」クイ

一希「――と。すまない……速く歩き過ぎた」

小梅「う、うん……はぁ……は……」


一希「少し、休むか」

小梅「え……?」

一希「焦ってるだろうが、気を静かに保つんだ……あの子を見つけられるのは君だけなんだからな」

小梅「……私、だけ」

一希「あそこで売っているチョコバーでも買うか」

小梅「チョコ……あ、あるね。流石ハロウィン……お菓子が豊富、だね……」

一希「ここで待っていてくれ。買ってくるから」

小梅「え……でも、悪い、です。自分で……」

一希「遠慮はしなくていい」
36:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:11:16.15 ID:nmKq4XR30


小梅「…………」


小梅「あ、あの……手伝ってくれて、ありがとう」

一希「あぁ……それも気にするな」

小梅「どうして、手伝って、くれるの……? あ……手伝ってくれるんですか?」

一希「……どうしてだろうな」



一希「……他人事じゃないから、だろうか」

小梅「え……?」

一希「おれも……幽霊みたいなものだったからな」

小梅「幽霊……なの? そういえば顔色……悪い、かも」

一希「それは違うが……」

小梅「ポルターガイスト、じゃない……よね? この世に恨みを抱いて死んじゃった系……?」

一希「そういう風に喰いつかれても困るな。――設定の話なら……そうだな。リビングデッドという言い方もできるか。生きながらにして……死んでいた」

小梅「死んでたんだ……顔色悪いのは……そのせい?」

一希「顔色は関係無い。……人混みに弱いからだ」

小梅「リビングデッド、いいよね……。前見たキョンシーもかわいくて、好きだけど……やっぱりでろでろなゾンビが正統派だよね……あ、でも変化球で元気いっぱいにダッシュするゾンビにも今ハマってる……えへへ」

一希「……饒舌だな」
37:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:13:06.79 ID:nmKq4XR30

小梅「あ、ごめんなさい……」

一希「いや……もっと聞きたい。そうだな、お菓子を食べたら……話しながら探そうか。いいか?」

小梅「え……う、うん。喜んで……! そう、だよね。怖い話をすると……霊が集まってくるって言うもんね……」

一希「ああ。きっと話しながら探した方がいい。――じゃあ、買ってくる」

小梅「こ、混んでるから、気をつけて……」

一希「ああ……気合いを入れていく」


一希(自分の得意分野の話をして、少しは笑顔が戻ったか……)


一希(それぞれの世界観で人は生きている――)

一希(その見えているものを伝えるために……おれは本を書いたはずだ)

一希(感じたこと、考えたことを伝えるために)

一希(でも自分の発信は匿名だった。……読者が思い浮かべる作者は父……そこにおれはいない。暗闇の中でボールを投げていた……)



一希(だから、この少女を放っておけなかったのか)


一希(存在しないとされるものために、ここまで必死になれる人がいることが――うれしかった、のか)


38:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:14:05.19 ID:nmKq4XR30




一希「……買って、きた」

小梅「お、おつかれさま……大丈夫?」

一希「ああ……平気だ。これ、ぐらい」

小梅「そう……幽霊っぽい感じ……ますます強くなってるね。なんだか……暗がりからぼわ~……って出てきそう、です」

一希「幽霊っぽいとは顔色か」

小梅「うん。顔色です……ナチュラルゴーストメイク……?」

一希「そうか……幽霊の役作りをするコツがわかった。死にかければいいんだ」

小梅「死にかけるぐらい辛かったの……?」

一希「……流石に冗談だ」

小梅「……真顔だった、よ?」

一希「おれは真顔で冗談を言うんだ」

小梅「……なにそれ…………ふふ……ふふふっ」

一希「さあチョコだ。溶けないうちに食べるといい」

小梅「まって……あれ、言わなきゃ」

一希「――?」


小梅「Trick or Treat……おかしをくれなきゃ、いたずら、するよ……♪」


一希「……ふ。Have a nice trick-or-treating.――ハッピーハロウィン」
39:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:15:34.34 ID:nmKq4XR30

――……


一希「再開しようか」

小梅「あの子探し……」

一希「がんばれるか」

小梅「うん。おどろおどろしいのとか……怖いのは……好き、だけど、こ、こんな友達がいなくなるような、怖さは……ほしくない、から」

一希「……そうか」





また歩き回る。

しかし手がかりはつかめないまま、時間だけが過ぎていく。



一希「『あの子』はどうしていなくなってしまったんだろうな」

小梅「……わからない。でも、きっと……なにかに巻きこまれたんだと、思う。このフェスタ……す、すっごくぞわぞわする空気が、流れてる、から」

一希「……妖しいのか」

小梅「うん……とっても……。廃病院とか、廃ホテルとか、廃研究所、とか……そんな所の感じと、似てる、かも……」

一希「とりあえず頽廃的なわけか」

小梅「3年前に惨劇があったり、呪いの伝承があったり、死神がとりついてるみたいな……」

一希「ミステリだったら連続見立て殺人でも行われそうな設定だな……」

小梅「み、ミステリ……かぁ、でもホラーなら、そして誰もいなくなった、って終わりそう……最後の生存者が、ほっとした途端にぐさぁって……ふふっ……」

一希「そんな展開は遠慮したいがな……」

小梅「……うん。……今日は、だ、誰もいなくなってほしくない、よ」
40:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:17:09.00 ID:nmKq4XR30

雑踏を避けて歩いてはいるが、ここに集う人は時間とともに増え、人混みは徐々に大きくなってゆく。

狼男、悪魔娘、フランケンシュタイン、かぼちゃの王子、魔法使い……アニメのキャラクターの格好をしている者もいる。

この世ならざる者たちの群れ。



一希「そうだ。人じゃない……落ち着け……」

小梅「リア……カップルの人も……ちらほら見るね……」

一希「そうだな」

小梅「爆発」

一希「待て」

小梅「……しそう。私が……」

一希「そっちか」

小梅「知らない人が多いところ……苦手」

一希「……よくわかる。おれも……図書室が好きな子どもだった」

小梅「あ、私も……図書室は……学校で、よくいく……。静かだから好き……」

一希「ホラー小説を読むのか?」

小梅「ううん。そんなに読まない……かな。映画の方が……好きだから。あんまり……怖くないよね」

一希「……表現媒体の違いだな」
41:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:17:58.54 ID:nmKq4XR30


小梅「本と言えばネクロノミコン……死者の書。知ってる……?」

一希「死霊秘法ネクロノミコンか……あれは有名になり過ぎた。登場した作品は20作以上読んだが……美少女になってたり、兵器の名前に冠されていたり……色々新味を足されすぎな感があるな」

小梅「カオス……」

一希「鉄板でない使われ方をされるということはそれだけ人気のある題材ということだ」

小梅「うん。私もネクロノミコンに憧れて……レプリカ、手に入れたの。宝物にしてる……」

一希「レプリカを持っているのか。ほう、それはいいな。羨ましい」

小梅「えへへ……いいでしょ」

一希「実はおれも、カリオストロのネクロノミコンの素因となったといわれる、ウイチグス呪法典を探したことがある」

小梅「ういちぐす……呪法典? 聞いたことないけどなんだか、あやしい響き……」


一希「『ウイチグス呪法典は技巧魔術(アート・マジック)で、今日の正確科学を、呪詛と邪悪の衣で包んだものといわれている』」

一希「これは異端であるシルヴェスター二世十三使徒の一人が秘かに作り上げた、大技巧呪術書だ」

一希「一説にはクトゥルー神話の『アル・アジフ』はこの書のことを指しているとも言われているな」


小梅「わぁ……いかにも、だね……。そんなのあるんだ……知らなかった」

一希「……」

小梅「それ、見つかったの……? 読んでみたい……」
42:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:19:46.96 ID:nmKq4XR30

一希「いや、見つからなかった」

小梅「えぇ……そうなの。残念……」

一希「それも当たり前だった。存在しないんだ。そんな本は」

小梅「え」

一希「とある推理小説――いや単に推理小説と言うには語弊がある奇書に、その名前は登場した」

一希「そのウイチグス呪法典のことは、衒学的でさえある圧倒的なディティールと迫真性とともに説明されていたんだ」

小梅「でも……本当はないんだよね?」

一希「ああ。着想は別のところにあるにしろ、ウイチグス呪法典それ自体は作者の創作だった――おれは、それを信じてしまった」

小梅「そうだったんだ……よく、できてたんだね」

一希「ああ。実際、そんな本は無いと知った時、失望よりもむしろおれは感銘を受けた。在りもしないものを在るとする、小説の……物語の魔法に魅せられた」

小梅「……ないのが、ある」

一希「あると、感じたんだ。いや過去形はおかしいな。今でもまだ、その本はどこかに存在しているんじゃないかと思っているから」

小梅「……おにいさんの中では、あるんだね。……それじゃあ、それって、本当にあるのと同じ、だね」

一希「……ああ。細部にこだわることで初めてリアリティが生まれると、そう実感をともなって学べたんだ」
43:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:21:08.33 ID:nmKq4XR30

小梅「私もね、見えない人、多いけど……疑ったことない。『あの子』の存在……」

一希「ああ」

小梅「それをおにいさんにも信じてもらえたってことは……わ、私も、その推理小説と同じくらい、リアリティがあったってこと、かな……? ぇへへ……」

一希「…………おれは、影響を受けやすいからな」

小梅「そう、なんだ。あれ……顔ちょっと赤い、よ……?」

一希「照れてない。……これは、そう、仮装の準備だ」スポッ


小梅「あ、キノコの被り物……? かわいい、ね」

一希「毒キノコの、被り物だ。よくできているだろう」

小梅「うん……サイケデリックでいい感じ、だよ。でも……キノコを題材にしたホラーは……ちょっとぞくぞくより、あははってくるのが多いよね」

一希「そういう映画は予算が無い場合が多いんだろう……」

小梅「キノコ、好き、なの?」

一希「たまにキノコ狩りをする。食用かどうかは見分けられるから」

小梅「わぁ……じゃあ、輝子ちゃんとも、気が合うかも、だね」

一希「しょうこ? 君の友達か……そう言えばいっしょに来ていたという友達はどうしたんだ?」

小梅「うん……一回はぐれた後ね、あの子がいなくなっちゃって……わ、私、あの子を探してきますって、連絡して……」

一希「今は別行動とっているのか」
44:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:44:24.61 ID:nmKq4XR30

小梅「うん……別行動するって、連絡した時……さらわれるって心配されちゃったけど……ここは、私ががんばらなきゃ、いけないから」

一希「さらわれる? ずいぶん心配性だな」

小梅「うん。で、でもこのフェスタ、実際に朝から何人かいなくなってるみたいだから」

一希「……そうなのか? そういえば、警戒に当たっていた警官がそんなことを言っていたような気がするな」

小梅「……『ハロウィンの悪魔』」

一希「なに?」

小梅「人を探していますって、つぶやき、拡散されて……ネットでウワサになってるの。人さらい出てきてるんじゃ、って……」

一希「……人さらい」

小梅「それをね、ハロウィンの悪魔の仕業だって、みんな……ネタにしてるみたい。そんなこと言って、はしゃいでる人たちがいるの」

一希「鮮度のあるタイムリーなネタに不特定多数の人間が一挙に群がり、そのミームを補強する……珍しくもない流れではあるが」

小梅「これもありもしないものを、あるってしてるってこと、なのかな……?」

一希「不可思議な現象は妖怪や悪魔のせいにされる……新しい怪異の成立を見るようだな」

小梅「妖怪……あの子も、さ、さらわれちゃったの、かな。ハロウィンの悪魔に」

一希「………………。きっと、見つかるさ」
45:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:46:45.18 ID:nmKq4XR30


一希「その、妖怪の話は好きか?」

小梅「……え?」

一希「あの子がいなくなった理由を考えるのに、さらわれたとする可能性を探ることは正解だと思う……だから、その……ホラー的な論理で以てこの謎を解いた方がいいんじゃないかと、思う」

一希(……会話となると水を向けるのが下手だな、おれは)


恐怖を生む妖怪の話――霊を集めるための、怖い話。

彼女の趣味のホラーな話題。


小梅「好きだよ……妖怪も。今日の仮装、和風ゾンビにしようかなって考えたし……」

一希「和風ゾンビ? 宗教観が気になるな」

小梅「…………幽霊のおにいさんは」

一希「なに?」

小梅「から傘オバケとか似合いそう、だね。キノコにもカサがあるけど……」

一希「このキノコはから傘オバケに接続したわけじゃない。もしかして……『一つ目』からの着想か」

小梅「うん」

一希「片目を隠してるのはそっちも同じじゃないか」

小梅「そうだね。おんなじ……」

一希「しかし、そうだな。おれには合ってるかもしれないな。から傘オバケ……付喪神(つくもがみ)」


付喪。

九十九。


一希(幽霊や、妖怪の要素……おれには生来的に宿っているのか?)

一希(――いや、何を考えている。今のおれはもう……違う)
46:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:49:01.34 ID:nmKq4XR30


小梅「つくもがみ……物に命が宿ったのだね」

一希「そうだ。長い年月を経て、器物が化けたものだ」

小梅「ポルターガイストとは、別なんだよね。物自体が、生きてる……」

一希「生きてる、という定義でいいのかはわからないがな……そもそも妖怪の半分はフィクションの存在だから」

小梅「半分……? じゃあ、もう半分は本当……?」

一希「民俗学的な観点で見た妖怪は、なにかの暗喩、メタファーと見ることができるからな。天狗と化した崇徳天皇、首が飛行した平将門……」

小梅「フライング生首……やっぱり、中々、い、インパクトある絵だよね。昔の人も、ツボ、押さえてる……」

一希「……君は少しずれた返答をするんだな」

小梅「えへへ……。え、と……じゃあ、つくもがみの話、しよ。ぬいぐるみも巨大化してモンスターになったりするけど、それもつくもがみって言えるかな?」

一希「巨大化? いやそこまでいけば、それはむしろ別の超常現象だと思うが」

小梅「そうなんだ……オバケとは、違うんだね……やっぱり。長い時間をかけて、ひとりでに魔力を持つのがつくもがみ……」


一希「長い時間をかけて変化するのは付喪神だけとは限らない」

小梅「え……?」
47:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:49:49.72 ID:nmKq4XR30


一希「例えばサザエも30年も過ごせば鬼になる。サザエ鬼という妖怪だ」


『画図百器徒然袋』――鳥山石燕が『徒然草』等の記述から着想を受けて創り出した妖怪たちの画集。

器物から化けた妖怪たちがまとめられているのだが、なぜか器物ではないサザエ鬼もこの徒然袋の中に入っている。


一希(……あれはどうしてなんだ)

小梅「サザエでホラー……隠しきれないね、B級感」

一希「B級……中々恐ろしい伝承もあるんだが……まあ、有名ではないしな。有名なものは……猫又あたりか」

小梅「あ、ポピュラーな名前……しっぽ、ふたつに分かれるんだよね。ねこまた……」

一希「猫は長い年月、九十九(つくも)を生きて猫又へと変わる。これも変化する妖怪だな」

小梅「ネコ、たまに何もないとこじっと見てるけど……あれも幽霊とか、見てるのかな。魔力、人間より強い気がする……」

一希「……人とは違う世界を持っているのかもしれないな」

小梅「猫又に進化できるのも……分かるね……」


一希「さらに歳を重ねて、強い力を得た猫又は猫しょうに至るというな」

小梅「え? まだ、進化、するんだ……びっくり……。猫しょう……しょう?」

一希「『しょう』はこう書く」



48:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:52:14.91 ID:nmKq4XR30


小梅「メモ帳持ち歩いてるんだ。えと、つくりが鬼……だね」

一希「ちなみに……この『魈』は山を住処とする一本足の怪物を指す」

小梅「一本足……から傘オバケとか、イッポンダタラ、みたいだね」

一希「イッポンダタラか……関連が深いことは間違いないな。山中に住むところも類似している」

小梅「なんか……デザインが似てるコ多い、ね……」

一希「一つ目と、一本足。日本においてはそれは天目一箇神とも関連付けられるから」

小梅「あ、あめのまひとつのかみ……なぁにそれ。神様?」


一希「ああ。製鉄民族のなれの果て。貶められた零落神……それがイッポンダタラだ」

一希「一つ目と一本足は、蹈鞴(たたら)製鉄を仕事とする者たちの職業病だ」

一希「片目で火の加減を見極め続け、片足で送風装置の蹈鞴を踏み続ける……そのうちに片足と片目は悪くなる……」

一希「製鉄に従事する者達のそんな有様を……妖怪だと騙ったんだ」

小梅「え…………」



小梅「だから一つ目と一本足。元は人なんだね……」

一希「ギリシア神話にもキュクロプスという単眼の巨人がいるが、その怪物もまた鍛冶技術に長けていたと言われているな。理由はイッポンダタラと同じだろう」


小梅「あ、知ってる。サイクロプス、だよね……? コスプレしてる人いた。……日本と海外でホラーの着想が重なることってあるんだ……おもしろい、ね」

一希「ホラー……ああ、そうだな。畏れの話だからホラーと言っていいだろう」
49:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:53:42.93 ID:nmKq4XR30

一希「人が呼び、人が蔑み、人が恐れて……妖怪は生まれ出ずる」

小梅「妖怪の仕業……」

一希「天災を化物の仕業にする。神仏を軽侮し妖にする。――さっき言った器物が年月を経て化ける例を除けば、怪異が創られるのは大抵そんな時なんだ」

小梅「…………じゃあ」

一希「?」

小梅「『ハロウィンの悪魔』もみんなが作ろうとしてる妖怪なのかな……? でもそれは、ち、違うよね。被害が先にあったもん……」

一希「……『本物』もいる、と定義してみるか」



一希「そうだな。考えなければならないな。仮に……このフェスタで人をさらっていく者がいたとして。それが君の友達すらさらったと仮定して、それはどんな存在なのか」

小梅「ここの……ぞくぞくした空気も、そのハロウィンの悪魔のせいかも……」

一希「人をさらうもの……」

小梅「映画だったら……一人一人消して恐怖を煽るけど……それは演出、だもんね。その子は、な、何のためにさらうんだろ、ね?」

一希「どんな設定なのか、か」

小梅「……あ。……人間をさらいたいのか、それとも人間以外をさらいたいのかも分からないね」

一希「なに?」

小梅「ほら……ここ、みんなハロウィンの仮装して……人間じゃないフリしてる人だらけ、でしょ……? いなくなったって人も仮装してた人だし……目当ては人間じゃないかもしれないかも……って」

一希「なるほど。鋭い指摘だ」
50:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:56:30.53 ID:nmKq4XR30

小梅「もし『あの子』までさらったんなら、それは……人間じゃなくてもいいわけ、だよね。生きているかどうかも関係無いわけだよね……?」

一希「人も、人にあらざる存在も……区別が無い」



生きていても死んでいても。

区別なく、差別なくさらう。



一希「本当に悪魔みたいな存在だな……」

小梅「そ、そんな妖怪、いるのかな?」



雑踏に視線を遣る。

仮装した大勢の人がライトなホラー感を享受し、騒ぎながら歩いている。

……その騒がしさが、少女と静かに話していた心の水面を波立たせるのを感じる。



魔女やゾンビが。

フランケンシュタインや狼男が。

ヴァンパイアやジャック・オ・ランタンが――気兼ねなく往来を行きかっている。



ある種、不謹慎な印象も受ける。人と人以外、生と死の境界をいたずらに乱しているような。

ハロウィンの悪魔。そんなものが出てくる素地を作ってしまったのはむやみに騒ぐおれ達なのかもしれない。

51:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:57:40.05 ID:nmKq4XR30


『狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり。悪人の真似とて人を殺さば、悪人なり』

『心せよ亡霊を装ひて戯れなば、亡霊となるべし』


徒然草にも、カバラ戒律にもある警句。


失踪は、それを犯したしっぺ返しとでもいうのか……



変わることの代償。

変わることの罪。


人は己の領域から踏み出してはならない。


ならゴーストだったおれは――?



駄目だ。思考に没入しすぎるな。


一希「…………う」



気分が悪い。

いや……今日はずっと体調がすぐれない。

人が多いのは苦手だ。さわがしいのは苦手だ。

こんなアウェイで……自分の在り方を考えるべきじゃない。


一希(――いや、なにを言っている)

一希(人が多いだの、アウェイだの……おれは、アイドル、なのに……なにを言っている)

一希(以前のおれとは違うんだ)
52:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:59:58.67 ID:nmKq4XR30

しかし……まだ大勢の人を怖がっている。

少しずつでも進んでいると思ったが、おれはまだ変われていない?


心はまだ飼われたままで……変われていない?


いや。

いや――


ああ……頭が痛い……。


一希「ぐ……ぅ……っ」


街頭に飾られているカボチャが、ぎざぎざした笑いをこちらに向けている。


ジャック・オ・ランタン。


天国にも地獄にも行けないゴースト。



小梅「だ、だいじょうぶ……? どうしたの……っ」

一希「いや……大丈夫、だ」

小梅「また……ゴーストっぽくなってる、よ……?」


ゴースト――


一希「おれはゴーストじゃない……!!」

小梅「ひゃぁ!?」

一希「――! す、すまない……!」

小梅「あ、あの……顔色がまた幽霊っぽい、って……ご、ごめんなさい」

一希「いや……違う。違う。非はおれの方にある。すまない」
53:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 20:01:40.34 ID:nmKq4XR30


小梅「……う、ん…………」

一希「…………」

小梅「…………」

一希「…………」



小梅「……あの、私、ちょっと……きゅ、休憩、したい、な……って……」

一希「……」






・・


・・・






オープンテラス


一希(おれは……なにをやっている)


気を遣わせた。

消えた友達を探している年下の少女に。


一希「すまない……」

小梅「え、えと……この、ハロウィン限定パンプキンジュースにする……? それとも、この血まみれ脳漿風パスタ頼んで半分こしよっか……?」
54:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 20:04:58.01 ID:nmKq4XR30


一希「いや。コーヒーでいい」

小梅「うん、わかった……コーヒー、だね」

一希「……君は好きなものを頼め」

小梅「……ありがとう、ございます」


一希「いや……こっちの台詞だ。気を遣わせてしまったな」

小梅「だ、大丈夫だよ。これくらい。……気づかいなら、響子さんとかの方が……もにょもにょ……」

一希「君の仲間は心が温かな人たちなんだな」

小梅「……うん。心があったかい人たくさんいる。涼さんって人はねやさしくて……よく、ほめてくれる」

一希「涼……か。おれにも同じ名前仲間がいる。……尊敬している」

小梅「そうなんだ……ふふ、もしかしたら同じ人かも。女の人?」

一希「いや、男だ。色々複雑だったようだが」

小梅「あ、じゃあ違うね」


一希「――おれは……なんというか、以前は、自分が生きている実感が無かったんだ。ゴーストと呼ばれるのが似合う人間だった」

小梅「え?」

一希「そんなおれが外に出て、改めて自分の生き方を決めてみようと考えたのは……彼のおかげなんだ」
55:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 20:06:17.58 ID:nmKq4XR30

一希「ただ……さっきは、外に出てもおれはまったく変われていないんじゃないかと……そんな不安に襲われたんだ」

一希「気分が悪くなった理由はそれだ。迷惑をかけた」

小梅「え、え……?」

一希「唐突にこんな話をされても理解できないな……すまない。これは……単なる感情を自分の中で整理するための言葉……独りよがりの文言だな」

小梅「え、と……おにいさんは変わろうと、思ったんだ?」

一希「……そうだ」


一希「だが……実際に変われているんだろうかな、おれは」

一希「明るく、強い仲間に囲まれて――環境が変わって自分が変われたと錯覚していたに過ぎないかもしれない」

小梅「…………」


小梅「――大丈夫」


一希「な……」

小梅「よくわからないけど……人は、変われるよ。私が保証、する」

一希「…………」

小梅「そ、それは大きい変化じゃないだろうけど、根っこの好みとかは、変われないけど……挑戦したなら、その先があるよ。絶対……」

一希「挑戦……」

小梅「うん。挑戦。ちょっとだけ強くなったり、苦手なものに立ち向かえるようになったり……挑戦したならそういうこと、できるようになってない?」
56:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 20:07:10.58 ID:nmKq4XR30



一希「…………」



――『一希さん、今のすごくよかったですよ! その調子です!』

――『はっは! 先生! かっこよく踊れとるぞ! 負けてられんの!』



一希「…………なっているな」

一希「ああ――――なっている」


小梅「ほら、ほらね……! でしょー」

一希「変化は、確かにあった……」


一希(仲間の言葉なら、信じられる)



それは確かに、信じられる。

秘密を話せるプロデューサーもいる。

おれは……以前のおれとは確かに、違うはずなんだ。



小梅「じ、時間が経てばいろいろ変わっていくんでしょ……? 猫も、傘も……」


小梅「じゃあ、その……あなただって、変われると思う……」


小梅「死んでても……生き返ったり。幽霊だって……、違う、なにかに変われるよ」
57:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/12(木) 20:08:31.89 ID:nmKq4XR30

一希「幽霊でも変われる……」

小梅「うん。そ、それでがんばって変われたら、ほめてもらおう?」

一希「ほめて?」


ほめてもらう……


ああ、それはいいかもしれない。

『自分』に向けられる称賛を求めていってもいいかもしれない。

今のおれは――九十九一希なのだから。


小梅「ほめられたら、やったってなって……またがんばれる、から」

一希「……そうだな。その通りだ」

小梅「え、えへへ……」


一希「礼を言う。……ありがとうございます」

小梅「うん。どういたしまして……」

一希「少し、場の空気にあてられてメンタルが揺らされたな。つまらない話に付き合わせて悪かった」

小梅「ううん、ここ……すごくぞわぞわする空気だから、無理ないと思う……」


小梅「チミモウリョウ……いっぱいだし」
73:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:02:33.43 ID:piWlzMOm0


一希(魑魅魍魎……そういえば)



以前、小説を書くために当たった資料を思い出す。



魑魅。


猫魈(ねこしょう)の『魈(しょう)』は「すだま」とも読み、これは魑魅の別の読み方でもある。


魑魅(すだま)は山中に住む鬼、山の怪のこと。魑は山林を表す。

水の怪である魍魎(もうりょう)と合わせ、至るところに現れる霊魂・物の怪・精霊・化物たちの総称となる。



そして、魍魎の方もまた猫と関連づけることができる。

なぜなら魍魎は……






一希「――『火車』だから」

74:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:08:03.82 ID:piWlzMOm0


小梅「えっ?」

一希「思い出した。魑魅も魍魎も、猫が化けて至る先なんだ」

小梅「ちみ、もうりょう……と猫?」

一希「猫と死体が関連深いことは知っているか」

小梅「う、うん……! 知ってる。イギリスじゃあね、猫がお墓に現れたら、埋葬されている人の魂は悪魔に支配されてるってことだとか……」

一希「日本でも路上の猫の死体を憐れむとその猫の魂に憑かれるという伝承があるな。まぁ、これは少しずれるが。有名な伝承にはなにより猫は人の死体を」

小梅「死体を盗むんだよね……!」

一希「――そうだ」

小梅「それ聞いた時、なんだか……わくわくしたから覚えてる。猫、かわいいのに、怖くていいなって……猫又に変われるだけのことはあるよね」

一希「ああ、それで」

小梅「死体を盗んで、何するのかな……? た、食べるのかな……? じゃあゾンビにも猫は寄ってくるのかな? がぶ、ふしゅるふしゅる、にゃあー……」

一希「……」

小梅「あ、ごめんなさい。ちょっとノっちゃった。えへへ……。そ、それで……えっと、ね、猫とちみもうりょうの話だったよね?」

一希「そう。魍魎の話だ」
75:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:09:02.42 ID:piWlzMOm0



一希(少しばかり、あの憑きもの落としの拝み屋の気分になるな……)



一希「猫は死体を盗む。それが周知されていたがために火車という妖怪は化け猫とされることが多い」

小梅「かしゃ……」

一希「火車は地獄の獄卒が曳く火の車だ。罪人を運ぶ車だな。それ自体を妖怪と見たものが火車だ」

小梅「地獄からの使者、だね……!」

一希「そう。そして火車は魍魎という妖怪と同一視されることがある」

小梅「へぇ……」

一希「魍魎もまた死者を引きこみ食らうから」

小梅「死んだ人を……食べちゃうんだ。ネクロ、カニバ……? 猫はチミにもモウリョウにも繋がるっていうのは、わかった……べ、勉強になりました」

一希「ここから本題なんだが」



一希「あの子がさらわれたとするなら、そんな存在の仕業とは考えられないか」

小梅「……え」
76:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:10:17.60 ID:piWlzMOm0


小梅「火車……犯人……」

小梅「でも、生きてる人もいなくなってるし……あの子をさらったのと、このフェスタに来た人をさらったのは……火車じゃあないって思うよ。死体を狙うんでしょ? 化け猫の火車って……」

一希「いやそれにも理屈がつけられる。そのものかどうかは分からないが、火車だったとしたら――」




一希「――!?」



言いかけたその刹那、視界に入った『現象』におれの意識は惹きつけられた。



ゆらりと、夢遊病者の様な歩き方で……群衆を離れ、路地裏へと吸い込まれていく少女。

周囲からはゾンビの物真似とでも思われて気にも留められていない。

おれ自身、彼女単体の姿を見てもそこまで注意を傾けはしなかっただろう。



彼女の向かう路地裏に溜まる影を見て、背筋にすさまじい震えが走らなければ。



一希「なんだ……あの路地裏に潜んでいるのは」



理屈も論理も超越する、圧倒的な畏れの本能。

あの薄暗がりにすさまじい闇を見る。



――――『なにか』がいる。確実に。
77:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:11:11.16 ID:piWlzMOm0

小梅「え……あれ……!? え……っ……!!」



一希(彼女も気づいたか)

小梅「あ、あそこの路地裏……す、すごい! “濃い”……! なにあれ……!」



小梅「あ、あそこだ……!」

一希「なに?」

小梅「あの子も、きっとあそこにいる……わかる……! い、行かなきゃ――!」

一希「待て!」


立ち上がった拍子にパンプキンジュースの飾りが転がった。


そして制止も聞かず彼女は駆けだしていった。


まるで冥府の扉の如き路地裏へ向かって。

78:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:18:03.86 ID:piWlzMOm0

一希「いきなりだな……!」




急転直下な展開。

唐突だった。


……これは因果だったのだろうか。

怖い話をすることで幽霊が集まってくるという。噂をすれば影がさす。


真相に近づいたことで、ストーリーが進展したのか――創作世界に毒された脳がおかしな仮説を立てている。


瞬時周囲を見渡して、意思を固める。

オープンテラス。テイクアウトした自分の分のジュースが見えた。……しかしここに留まる方にまるで天秤が傾かない。



考えているヒマはなかった。





一希「くっ……!」


手を握り締め、幽霊少女の後を追う。

79:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:18:51.95 ID:piWlzMOm0


――


――――


――――――





『ハロウィンは元はケルト人のサウィン祭に由来する。

ケルト人は10月31日を夏の終わりとし、新年は冬の始まりの11月1日とした。

そのため収穫祭は10月31日の夜から始まるのである。』




『夏の終わり。

 太陽の季節から暗闇の季節へ。

 10月31日は冥府の門が開き、死者の魂や精霊、様々な怪物が現世にやってくると考えられた。』




九郎「なるほど……お盆で祖霊が帰ってくるのとはまた理屈が違うのですね。勉強になります」

大吾「それガイドかの?」

九郎「はい。向こうで配っていましたよ。ハロウィンという行事について分かります」

みく「ふぅ~ん、みくも読んでみようかにゃ?」

九郎「お茶にも11月から炉開きがあり、冬の到来を炉に火を入れて迎えるのですが、そちらには興味がありませんか?」

みく「え、お茶はやってみたいと思うけど……あ、いややっぱダメにゃ! ほら! みくは猫舌だから!」

九郎「そ、そうですか……」

80:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:19:49.50 ID:piWlzMOm0


九郎「むむ、どうしたら若い人に茶の湯を……」

芳乃「お茶は良いですー。心がゆるりとほどけるゆえー」

翔真「あ、ほら九郎ちゃん好きな子もいるじゃない。くじけちゃだめよォ」

九郎「お茶に興味がありますか! うれしいですね」

芳乃「お茶は季節の情緒を深く感じられー、心安らかになりましてー」

九郎「そうなのです。お茶は自然と心の距離を縮めるのです」

歌鈴「わ、私も興味はあるんですけど、お茶碗ひっくりかえしちゃいそうで怖いなぁ……」

九郎「大丈夫ですよ、よろしければ指導させていただきますし――」

芳乃「……」




芳乃「自然との距離……まことに大切でしてー」



季節の切り替わり。



本来はそのような気の流れが変じていく日には行事を置くもの。


追儺(ついな)・鬼遣(おにやらい)が節分に。

穢れを祓う禊がひな祭りに。

81:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:20:37.09 ID:piWlzMOm0


芳乃(季節の変わり目には悪気、邪気が湧くゆえー)



行事を行うのは物事を区切るため。節を分かつためだ。


不死を分かつため。

陰陽を分かつため。


物事が切り替わる日には気を払う必要がある。



芳乃「……祭りはなんとも賑やかで好きなのですがー、このようないたずらに境を侵すようなものは危なくもあるのですー」

みく「あれ? 芳乃チャンはハロウィン嫌い?」

芳乃「好きでもありー恐れ多くもありー。ただ、わたくしは無邪気な方々の笑みは曇らせたくはないと思いましてー」

大吾「じゃの。祭りはみーんな笑顔でいてもらいたいもんじゃ」

涼「そうだね。ここでいなくなったって人たちも早く見つかるといいね……」

翔真「結局誰の仕業なのかね? 人を誑かして連れ去る輩がいるってんなら止めたいねェ。たとえ……妖怪の類でも」

キリオ「ワガハイとばっちりを受けたでにゃんすから、どんな顔かぐらいは改めたいでにゃんす」

みく「うっ!? みんなケッコウ、オカルトを受け入れてる感じなの……!?」

涼「……僕は信じたくないなぁ」

82:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:22:06.56 ID:piWlzMOm0


歌鈴「でも、実際にここ悪い気がわだかまってるそうですし……! え、えっと芳乃さん、魍魎の気配でしたっけ?」

芳乃「でしてー」

大吾「そもそもなんじゃモウリョウって? 涼は知っとるか? リョウだけに」

涼「し、知らないよ! 僕の名前とは関係無いんじゃないかな……」


翔真「ふふ、魍魎ってのは――アタシだよ」


九郎「華村さん」

みく「え、翔真サンがモウリョー?」

翔真「アタシ今、沙悟浄……河童のカッコでしょ。前の西遊記ドラマの時役作りのために色々調べたのさ。魍魎っていうのは判然としない存在だけど、おおむね水の怪のことさね」

大吾「ほー。モウリョウって河童のコトいうんか?」

翔真「魍魎って亡者の肝を食べるらしいから。尻子玉を抜く河童と同じように見られるらしいわよ」

歌鈴「えっと……じゃあ、こ、ここの悪い気の出所は河童ってこと、ですか?」

キリオ「川なんてどこにあるでにゃんす?」

翔真「河童は冬になれば山に入って山童(やまわろ)になるのよ。気が早い河童ならもう川から上がってんじゃないの、あははっ」

九郎「水辺の妖怪なのに山に入るんですか……」

翔真「そ。岩手県のとあるところじゃ河童は『淵猿』って言うし。舞台を移して役を変えるアタシ達と似たようなもんよ」

みく「ああ、ワケあってアイドル……」
83:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:24:00.93 ID:piWlzMOm0


翔真「しっかし、そうさね……勢い半分で言ったけど、ホントに河童の仕業かもしれないわね。河童も川に人を引きずりこむし」

涼「『ハロウィンの悪魔』の正体は河童……?」

大吾「悪魔?」

涼「いや、友達がねさっき教えてくれたんだ。このフェスタで人がいなくなってるけど、それネットでは『ハロウィンの悪魔』の仕業ってことにされてるって」

九郎「不謹慎な……」

キリオ「河童サン、色々な芸名があるでにゃんすなぁ~、やまわろ、ふちざる、はろうぃんの悪魔!」

翔真「河童は、ホントに色んな名前で呼ばれるわ。まぁ水辺の色んな妖怪を河童って総称で呼んだからなんだろうけど」

翔真「覚えてる限りでも他にもカハク、スイハク、ワロドン、コマヒキ、ヒョウスベ、ゴンゴウ、カシャボウ――」

芳乃「でしてー」

翔真「ん?」

歌鈴「え、え? どうしました?」


芳乃「火車も河童もーその振る舞いは違えどもー根底は通ずるところがあるのでして―」

キリオ「カシャ? ああー、呼び屋サンのことでにゃんすね~」

芳乃「いえーそれとは違うのでー……いえー、やはり同じでありますねー」

みく「な、何の話? ワケわからんにゃ。カシャとかヨビヤってなに?」

翔真「多分『遣り手』のことを言ってんでしょ。あ、遣り手もわかんないか」

みく「うん……」

84:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:25:26.60 ID:piWlzMOm0


翔真「そんじゃちょいと教えとこうかね。遣り手ってのは遊郭用語よ。遊女の世話や躾をして遊郭を切り回す老女はね、遣り手――『遣手婆』っていうの」

翔真「身を寄せる場所が無い遊女上がりの女は廓に雇ってもらうワケ」

涼「アイドルをやめても事務員として雇ってもらうとかそういう感じでしょうか」

翔真「まぁそんな感じかねェ。それでその遣り手の別名に花の車と書いて『花車』ってのがあるのよ」

九郎「花車、ですか?」

大吾「お、じいさんから聞いたことあるぞ! 香車とも呼んだんじゃろ? その遣り手のばあちゃんを」

涼「香車って、将棋の駒の?」

大吾「そうじゃー。だからじいさん、たまに香車の駒を遣り手って言うとったんじゃ」

翔真「そ、そ。遣り手を香車、花車とも呼んだわけ。まぁ、これは妖怪の火車みたいだからってのが理由でしょうね。……かなり壮絶なこともしなきゃいけない仕事だったみたいだし」

みく「ふぅん……きつい仕事だったの。やっぱり昔もきれいなとこで働こうって思っても、裏じゃすっごいタイヘンだったんだ」

翔真「そういうことね。あ、呼び屋っていうのは簡単に言うと遊女を迎えるための店のことよォ」


九郎「く、詳しいですね華村さん」

翔真「まぁ、勉強したしねェ。歌舞伎は起こりからして遊女とは密接な関係にあるし」

キリオ「落語にも遊郭の噺はいっぱいでにゃんすよ~五人廻し!」

85:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:28:35.69 ID:piWlzMOm0

芳乃「でしてー。そうなのでしてー」

歌鈴「芳乃さん?」

芳乃「河童は牛頭天王――スサノオノミコト様の祭礼の日にみだりに川で遊ぶものを引き込みー」

芳乃「そして火車は罪深き人のその亡骸をさらいますー」

キリオ「花の車の方の花車さんは客を呼び込むでにゃんすね」

芳乃「でしてー。すなわち“人を引き込む”ことこそ、かしゃ……『くわしや』の本質なのでしてー」


歌鈴「人を引き込む……」

涼「くわしや?」

翔真「ウン? 遊郭と刑場は近い所にあったから……花車と火車が結びつけられたって話は聞いたことあるけども」

芳乃「わたくしがこの地で感じた化け猫の気配も、もうりょう、『魍魎(くわしや)』のそれでありー、彼のものが人を引き込んでおるのでー」

翔真「ああそうそう、確か魍魎ってくわしやって読むんだっけねェ」

歌鈴「ここにいる悪いものっていうの、くわしやなんですか……?」

芳乃「でしてー。この世ならざるものを装う人々とわだかまった悪気が、此岸と彼岸の境界を薄れさせておりー、魑魅とも魍魎とも繋がり深いくわしやが今まさにここに降りているのですー……」


キリオ「ほほー」

九郎「……」

涼「……」

みく「ご、ゴメン……流石にちょっとついてけないにゃ……。芳乃チャンが考えたお話……じゃないよね?」

芳乃「……やはり縁遠く聞こえてしまいますわねー」

86:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:30:49.27 ID:piWlzMOm0


芳乃「しかしそなたたちが信じなくともよいのでしてー。つまりはわたくしがー」

キリオ「にゃ?」

芳乃「頃合いでしてー。みなさまー、ここまでの同道を感謝いたしますー」ペコリ

歌鈴「え、芳乃さん?」

芳乃「後はわたくし一人でなんとかするのでご安心をー。必ずやみな皆様の心に安らぎを齎しますゆえー」


みく「え、一人で行くの? よくわからないけどオカルトな話なら、せめて巫女の歌鈴チャンだけでも連れてったほうが」

歌鈴「ふぇ!? わ、私ですか!? で、でも………………いや! が、がんばらなきゃいけないですよね!? やっぱり!」

芳乃「そなたたちのその御心はまぶしくー。その心遣いだけでわたくしの心は満たされまするー……」

芳乃「ですのでー、気になさらずそなたたちは存分にこのお祭りを楽しみなされませー」

歌鈴「そんな……」


大吾「なんじゃ、ハロウィンの悪魔だか妖怪だか知らんが、人さらいを一人でやるつもりかい。無謀じゃろそんなん」

芳乃「妖怪変化もまた神様と同じく、人の想いを享けましてー。さらに化けてしまわれるやもしれずーわたくし一人でいくのがよろしいかとー」

九郎(化物は……人の気持や恨みがもたらすもの……)



芳乃「問題はないのでしてー。失せ物探しも、けがればらいもわたくしの得意とするところでしてー」

芳乃「それでは失礼いたしますー」トトトー



涼「あっ! 行っちゃった……」

87:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:32:15.07 ID:piWlzMOm0


みく「ど、どうしよっか?」

歌鈴「……どうしましょう」

翔真「本当に化物がここにいるってのかい」

九郎「妙に真実味がある話し振りでしたが……」


涼「やっぱり……ついていきませんか? いなくなった人たちを探すっていうんならやっぱり人手が多い方がいいですよ」

大吾「……オバケに会うようなこと言うとったぞ。涼、苦手じゃろ?」

涼「そ、そうだけど。それでも女の人を一人で行かせるのっていうのは、やっぱり……」

大吾「は! やっぱ涼は男じゃのー」

涼「え、大吾くん?」

大吾「そうじゃそうじゃ! やれることはあるはずじゃ! せめてライブの準備が始まるまではついていって手伝おうや!」

涼「……うん!」


翔真「ふふ、男を見せるじゃない。ボーヤ、九郎ちゃんアタシ達も――」

九郎「あれ!?」

歌鈴「ひゃあ!? ど、ど、どうしたんですか?」

九郎「ね、猫柳さんの姿が見えないのですが……」

みく「えっ」


翔真「……自由人ねェ、あの子は。なんにも迷わずついてったわね」

88:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:34:01.23 ID:piWlzMOm0

――

――――

――――――






小梅「はぁ……はぁ……はぁ……っ……!」


一希「待て……! 危ない……っ」



駆ける少女を追いかけるが、人ごみが行く手を阻む。


しかし、止まれない。止めなければならないから。



あの路地裏に潜むのは、このフェスタで人をさらう『ハロウィンの悪魔』だ。

それは直感で……触感の震えで疑いようもなく理解できる。

このフェスタに来た人も、『あの子』も、あそこにいるものにさらわれたのだ。



圧倒的な『不気味さ』。



人のことを貶めて呼んだ妖怪ではない。

設定作りで生んだ空想の怪物ではない。


戦慄を運ぶ悪気が確かにそこにある。



感じられるのは……霊感が強い少女の近くにいたせいで、おれ自身の霊感もまた鋭くなっていたせいか。

それとも『それ』の気配があまりに圧倒的な濃度を誇っていた故か。


89:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:35:11.48 ID:piWlzMOm0


一希(火車なのか。やはり――)





火車は亡者をさらうもの。

あの少女は『ハロウィンの悪魔』は生きている人もさらっているのだから火車ではないんじゃないかと言ったが、今日この日に限ってはそれは関係無い。


なにしろ今日のこの場所は……“亡者を装う者たちが溢れかえっている”。



先ほど路地裏に引き込まれた少女もまたゾンビの仮装だった。


――心せよ亡霊を装ひて戯れなば、亡霊となるべし。



元々ハロウィンで仮装するのは、冥府より現れた魔物たちに『自分は同類だ』とアピールし難を逃れるためだった。

死後の世界に引き込まれないために生者のふるまいをやめる。



しかし、この日本で。火車を相手にその行いは――間が悪すぎ、魔が悪すぎた。

致命的な悪手。


ただでさえ火車と近い魍魎(くわしや)には生者を引き込む力もあるというのに。

90:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:36:15.40 ID:piWlzMOm0


彼岸と此岸の薄れ、曖昧な生者と死者。両者の境はこのフェスタにおいておぼろげだ。


『くわしや』は……今の火車は、生者も亡者も関係なく連れていく。



もはやハロウィン限定の新種の魔物――『ハロウィンの悪魔』に変わっている。





小梅「はぁっ……! はぁー……っ」


一希「止まれ……っ!」




引き留めなくては。この少女さえもさらわれる。




一希「この……っ」



走り、片手を伸ばし、振れる小さな手を掴む――


91:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:39:17.46 ID:piWlzMOm0






  ―――― ぞ わ り 




92:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:42:41.82 ID:piWlzMOm0


一希「――っ!!」

小梅「あ…………っ!!」



瞬間、肌が凍った。



いつの間にか足が暗がりに踏み入っていて。

体が細い路地裏の空間に捕えられてしまっていた。






……体が動かない。



息さえ止まっている。




一希(なんだ……陽炎? いや。違う……)



眩暈がするほどの鬱々たる気配。




先ほど目にしたゾンビに仮装した少女が倒れていて。


その奥の暗がりに圧倒的な恐れを振り撒く『何か』が居た。


93:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:43:21.97 ID:piWlzMOm0


これは、なんだ……


一希(なんだ、こ、れ、は)



思考さえ滞っている。

描写が……幽々とした圧倒感のせいで追いつかない。



そう。

あれはまるで。



冥府への門そのもの……





――。




なのに。


恐れているのに、固まった体は少しずつ動き出していく。――前へと向かって。



蜘蛛の巣の如き、執拗で暗いそれは誘引で。


まるで強烈な暗示にかけられたが如く、体から自由が奪われ…………引き寄せられる。


94:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:45:37.58 ID:piWlzMOm0


細道を辿る……辿らされる。


狭く、細く、普段では気付かないような路地裏。

しかしその狭小な道は奥へと進行するに従って左右の建物が離れていき、その空間を広げていった。

闇に潜む隠れ家の風情。


……だが足の踏み場は相変わらず狭いままだった。





小梅「ひ、人、こんなに……」

一希「……ここに、いたのか」


目を見張った。

――10人はいるだろうか。何人もの人が力なく座り込み、道を塞いでいる。


いなくなった人たち。

疲れて休んでいるだけだと思いたいが、とてもそうには見えなかった。


糸が切れたように。意思が切れたように、彼らは微動だにしない。


深い眠りか……さもなくば――



一希(現実の風景か……これは……)



小梅「――っ! あ、あ……あの子が、いる……」

一希「な、に……?」
95:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:47:52.36 ID:piWlzMOm0

一希「…………」



少女の片目に映るものは、おれの片目には映らない。

信じるだけだ。

想像で補完するしかない。



奥の暗がりは建物の影が重なり一層黒く。置き忘れられた夜の闇がわだかまっている。

そこに、『あの子』はいるのか。



かちかち、と小さな音が耳に届く。


小梅「……ぅ……ぅ……っぁ……」



少女が震え、歯が音を立てている。


……彼女は飲みこんでいる。おれよりも鋭い感性で。目の前の恐怖を。


彼女は恐怖に浸りながらもそれを楽しめる人間なのに、今、目には不安の色しか浮かんでいない。


友達を連れ去られるという怯えが先にきている。



『あの子』以外にも、いるのだ。





『ハロウィンの悪魔』。



96:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:52:02.99 ID:piWlzMOm0



口を開けた深淵に、おれたちはにらまれている。


ここが最後の分水嶺。


これ以上進んでは引き返せない予感に満ちて。




一希「……ぐ……ぅ、っ!」



体の自由を取り戻そうとありったけの力を込める。

“気押されてる”

存在しない何かに。


動かなくては、ならない。




なんと、しても。



97:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:54:16.24 ID:piWlzMOm0


小梅「きゃ……ぁっ!」



その時強風が頬を叩いた。


路地裏に収束した風は猛烈な勢いをともなって暗がりを席巻し、壁を叩き地を削り、軋むような音を立てる。




――――ぐ、ぐ、ら、ぐ、ぐ、らぁ




それは。
寂寥で、荒涼で、
悲痛で、死山で、血河で。

怨嗟に満ちた雄たけびだった。



喉が枯れた猫が絞り出した鳴き声のような、朽ちかけた歯車のうらみがましい稼働音のような。

形容しがたい音が周囲に雨の如く満ちていく。




悪魔が嘶いている……?

地獄に連れて行こうと気炎を上げているのか。

98:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:55:21.87 ID:piWlzMOm0


一希(バカなことを考えるな)


一希(ただ……風が吹いただけだ……!)



思考を平易にしろ。目の前の事象を捉えそこなうな。魅入られては、戻れない。


『あの子』もこちらに戻せない――









小梅「か、返して……! 『あの子』を返して……!!」



99:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:56:48.65 ID:piWlzMOm0


一希「……!」



負の圧倒感は重苦しく空間に満ちていた。


それなのにその少女は、意を決して前に出る。



小梅「……ど、どうして連れていくの? 悪いこと、してないよ……」




さらに少女は一歩踏み出す。

黒々とした闇に向かって。



小梅「い、いやだよ。まだ、お別れ言いたくない……」




また、一歩。




小梅「まだ、そ、そう……手を繋げる様にもなってない、のに……!」




また、一歩。



進んでいく。自ら地獄行きの車へと。




小梅「お、お願い……連れていかないで……くだ、さい。大事な友達、なの……」

100:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:58:12.45 ID:piWlzMOm0


一希(自分がどうなってもいいのか……!)


おれには見えない存在のために。

自身が信じる存在のために。


彼女は包帯を揺らして前進する。


……彼女はマミー。亡者の装い。

ミイラ取りが魅入られて、ミイラとなる……そんな有様――。


一希「やめろ、いくな……!」


体を無理矢理動かして、彼女の細い腕を取る。


一希「止まるんだ。あそこには……何もない。おれには何も見えない。だから……」

小梅「やだ……やだよ……! あの子がいるんだもん……! と、友達なんだもん……!」

一希「だからといって今生きている君まで引き込まれてどうする……!」

小梅「い、生きてる人と……死んでる人は……友達になっちゃいけないの……? そ、そんなこと、ないよ……! ない……!」


小梅「しょ、証明、する……!」


制止は意味を為さず。

本能的な恐怖に屈せずに、彼女は自ら歩を進めていく。



一希「待て……っ!」

101:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 13:59:30.60 ID:piWlzMOm0


一希(どうしてそこまで――――)




ホラーが好きだから抵抗力があるのか。――いや、そうじゃない。


取った腕は震えていた。




   『私、あの子を……さがしてるんです……」』




友達が大切なんだ。……だから、彼女は怯えを噛み殺している。












しかしその震えは、おれの心の震えを止めた。

102:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:00:39.56 ID:piWlzMOm0


一希「……」


一希「…………」



一希「――そうだな」



それは、偽りのない意思の発露だったから。

103:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:04:30.45 ID:piWlzMOm0


圧倒感を受け取る触覚を切り離す、負の想像をする反射の思考を切り離す。

魍魎は四方にいるから自分の内側に全てを塞ぐ箱を作る。


そうして心のささやきを聴く。



人にはそれぞれの世界観があり、そこで各々は生きている。

彼女にはあの子が見えている。

ひょっとしたらそこにたたずむ火車さえ見えているのかもしれない。



見えないものを見て、存在しないものを存在すると信じ、友達にして……今は連れ戻そうと必死になっている。


彼女は自分に正直だ。

ならその言葉が、偽りにまみれていたおれよりも強い説得力を帯びるのは極めて自然だったんだろう。



彼女の言葉にはリアリティがあり。

そしておれは――――影響を受けやすい。





一希「……覚悟が……決まったよ」

104:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:07:10.09 ID:piWlzMOm0


考えろ。

体が慄いていたとしても、思考は自由だ。



……改めて定義する。

この世は幽霊が居る。妖怪が、魔物が、悪魔が、魑魅魍魎がいる。


そして今、眼前にいるのはハロウィンの悪魔……獲物の対象を広げた火車である。




火車は亡者を風の如く素早くさらう。

しかし、このハロウィンの悪魔は引き込んでからさらっている。むしろ振る舞いは別の妖怪、輪入道あたりに近い。

引き込む火車――『くわしや』の性質が強いのか。



火車には人を引きずりこむ『くわしや』に連なる存在。


地獄に亡者を引きずりこむ存在だ。



あの子は地獄に連れていかれる――


ならば、どうする。



どういう展開にする?

105:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:08:09.90 ID:piWlzMOm0


――あの子はまだ、地獄に連れていかれていない。



火車はまだこの地にとどまり、人を彼岸へと誘っている。



ならば連れていかせない方法は?






一希「………………」



火の車の性質。


載せられる者。運ばれるもの。


それを突く、たったひとつの冴えたやり方。



導きだすのに時間はかからなかった。




一希「代わりの亡者を載せる」


106:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:09:58.57 ID:piWlzMOm0






小梅「はぁ、はぁ……返して……っ」


小梅「あの子と、私……まだ、いっしょに、いたいんです……」


小梅「この世界で、まだ……」



一希「……止まるんだ」


近づいて、片手を彼女の肩に置く。


小梅「あ……は、放して……!」

一希「駄目だ。君まで連れて行かれる。こっちにやさしい友達がいるんだろう……向こう側に行くようなことをするな」

小梅「でも、あの子……もう連れていかれるって、助けてって……!」


一希「わかっている。だが、君が行くべきじゃない。もっと……適役が居る」

小梅「て、適役……?」

一希「連れていかせはしない。君ほどリアリティのある言葉じゃないかもしれないが……信じてくれ」

小梅「え……っ」




少女を留め、前へ進む。


107:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:11:25.99 ID:piWlzMOm0



――ゴオッ!!




一希(……風が……!)


近づくにつれ風が強くなり、髪が、服が煽られた。


踏み出す度に体が揺らされ、魔物の腹の中へと落ちていく心地になる。




禍々しく、荒涼とした、闇の中。


誘われたその先に光は果たしてあるのだろうか。


亡者はじきに運ばれる。




…………留まらせなければならない。


108:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:12:06.35 ID:piWlzMOm0

――……



小梅「……!」

小梅(適役って……なに……代わりが、いるってこと……? ……あの子の、代わり?)




ゴーストのおにいちゃん――


危なさも、怖さも、感じられてるはずなのに……その怖さが実際だって、現実だって感じられてないわけないのに。


それなのに。





なにを


なにをしようとしているの



まさか。



小梅「あ……ぁ……や、やめて……」

小梅「か、変わりたいんじゃ、なかったの……」

小梅「そ、そ、そこまでしなくて……いい、よ……!」



小梅「か……」


小梅「代わりになるなんて、やめて……っ!!」

109:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:13:26.32 ID:piWlzMOm0


――……


一希「うっ……く!」




風が唸りを上げる。


現世の風か、向こうの風か。



刺すような冷気が混じりだし、肌と心が侵されていく。




ぐ、ぐ、ら、ぐ、ぐぐ、ぐ、らぁ――――



風が一際強く暴れ狂い、瞬時、方向の感覚を失った。



そして濃密な悪気が降り注ぐ。






ぐぐら――ぐぐら――――



まるで勝利を喧伝するように、風音が震えている。


引きずりこまれた。



亡霊が、火車に、捕えられた。

110:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:13:59.79 ID:piWlzMOm0












風が高ぶり、膨れ上がり、そして終息していく。




青年の姿は影に飲み込まれていった。





111:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:15:04.76 ID:piWlzMOm0


――……


小梅「そんな……お、おにい、ちゃ、ん……」




ゴーストじゃないって言ったのに。


そう、言ったのに。




小梅「どうして……」













――――ごごあ!!


小梅「えっ?」



静まりかけた風が、怒り狂った轟音を響かせた。
112:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:15:55.96 ID:piWlzMOm0


小梅「え、え……っ?」


小梅(……どういうこと)



目を凝らす。


ハロウィンの悪魔の振る舞いを“視る”。



風がいきり立つ。軋みが苛立ちを伝える。


ぐ、ぐ、ぐ――――!




小梅「これ……怒ってる? ううん、違う……」



これは……



小梅「じ、じだんだ、踏んでる……?」

113:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:16:51.27 ID:piWlzMOm0


一希「…………そうだ。おまえの設定だ」


小梅「あっ」



青年がわずかに闇から離れ、姿を晒す。

その片手を掲げながら。



一希「お前は火車が変じたハロウィンの悪魔。生者と亡者を区別なく引き込み、地獄に連れていく」


一希「ハロウィンの状況にはまり恐ろしい存在になったな」





小梅「……あれ」



片手に握られたそれを見る。


小梅(あれ……パンプキンジュースについてた飾り……)





一希「だが……ジャック・オ・ランタンは連れていけない」




握られたそれは、ぎざぎざした笑顔を浮かべる小さなカボチャだった。

114:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:19:25.63 ID:piWlzMOm0



一希「やれやれ……拾っておいてよかった」


一希「無理なんだな。やはり」

一希「火車としての恐ろしさを持ったから、火車としての設定に則らなくてはならない」


小梅「あ……そ、そっか。そうだ……!」



ジャック・オ・ランタンは連れていけない。


彼は地獄にも天国にも行けない存在だから。


永遠にこの地上を彷徨わなければいけないから。



……聖者が死後の世界への立ち入りを禁じたから。

彼の者は火車でさえ地獄に運べない存在となった。




一希「地獄の管轄がどうなっているかは知らないが……伝承には伝承」

一希「お前はもう動けない。誰も連れていけない。お前の論理ではそうなる」

一希「そう。こんなものは机上の空論。形而上の遊び……そんなものに過ぎないんだ」


言葉をぶつけて、相手を制する。征服する。

……それができる。
115:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:20:24.02 ID:piWlzMOm0


魑魅魍魎。

鬼にまつわるものたち。


『鬼』という字は元々中国ではオンと読み、死者を指していた。

姿が見えない『隠(おん)』の転。揺蕩う亡霊・さまよう魂。


鬼とは古来、ゴーストを表す。



そして鬼と言う字は平安以前、奈良時代においては怨霊・悪鬼・精霊の類への呼称――『もの』と訓じられた。


物。鬼(もの)。もののけ。



物は鬼を内包している。




そう。

――――『物語』は元々、鬼を語るために生まれたのだ。




妖怪に零落させるために。

神霊に祭り上げるために。


風説を流布するために。

歴史を改竄するために。

116:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:22:03.34 ID:piWlzMOm0


一希(ならば、おれはこのハロウィンの悪魔を制すことができる)



語ることで形を定める。

記述と存在の関係は容易に逆転する。


あるから書ける。書くからある。



ありもしないものを在るとする。

小説の、物語の魔術。



一希「ハロウィンの悪魔。お前の正体は火車。人を引き込む魍魎(くわしや)だ」

一希「亡者を装う生者まで地獄に運ぶ、ハロウィン仕様の火車だ」

一希「だが……だからこそジャック・オ・ランタンが載っている限り、お前は動けない」

一希「諦めろ。代わりにお菓子ならやる。イタズラはもうやめろ。ハロウィンは……悪鬼が祓われる日だ」

一希「ここは、お前の餌場じゃなく墓場なんだ」




一希「……どうだ。伝わっているか?」

小梅「うん」





――ゴオッ!!!


117:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:23:26.07 ID:piWlzMOm0

一希「また烈風が……!」

小梅「あ、あの……す、すごい困ってる、よ……」

一希「そうか。今のこの国の宗教観に混乱するか……」


唸るような風音がしぼんでいく。


小梅「……」


小梅「お願い……です。あの子を、か、返して、ください」

小梅「みんな、か、解放してあげて」

小梅「も、もっとスプラッタ的な終わり方とか……悲劇的な終わり方のが、お望みかもしれない、けど。私も普段は、そ、そういう救われないエンドに心が惹かれちゃうけど……」

小梅「……でもみんな、こ、こっちに友達がいる、から……」

小梅「まだお別れは、早いから……」

小梅「だから、みんなを……そうすれば、わ、私たちもあなたを……」



一希「……!?」


その時、突発的に背筋がぞくりと震えた。

辺りの温度がまた下がった。


これは……



小梅「ほあぁぁ…………!」

一希「どうした」

118:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:25:04.29 ID:piWlzMOm0




小梅「あ、あ、あ」





小梅「あの子が……みんな、こっちに戻って……」

一希「なに」



一希(解放したのか)


一希(よ、かった)




一希「…………ぅ」



一瞬の気の緩み。

……強烈な邪な気配にさらされた体と心はすでに限界に近かった。



目の前が霞みがかり、膝が折れ、思わずおれは地に手を付いていた。

それはあろうことか、ジャック・オ・ランタンを宿していた方の腕だった。




火車の天敵が、離れて。


一希(まずい……!)

119:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:26:58.28 ID:piWlzMOm0



小梅「あ、だめ……っ」

一希「――――!!」






      悪気が噴出した。




怒りに震えるハロウィンの悪魔が苛烈な風をともなって地獄に引き込まんと強襲する。

冥府の扉がそのまま牙を剥いている。


現世と隔絶する邪なる気配。




獲り食われるのか。

ここまで来て。


だが……目的は果たした。おれがいなくとも……


一希(何を考えている……!)



涼。大吾……二人を待たせているのに


ジャック・オ・ランタンに向かって手を伸ばす。



一希「おれは……ゴーストじゃ、ない……!」



引きずりこまれはしない――――

120:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:27:50.90 ID:piWlzMOm0








「なんともはやー、言霊によって制してしまわれていたとはー」






121:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:28:35.58 ID:piWlzMOm0

一希「なに?」



不意に柔らかな声が降った。


そして冷ややかな重苦しい気配がにわかに掻き消える。



小梅「あ、え……? よ、芳乃さん……?」


芳乃「想いは力を持ちましてー。されどこの魍魎をここまで縛ってしまわれるとはー」



ジャック・オ・ランタンの飾りはいつの間にか現れた、和装の少女に拾い上げられていた。



芳乃「されど悪気にさらされすぎておられましてー。このけがれはらいはあとはわたくしにお任せをー」

芳乃「化け猫の悪果を平らげ、みなみな穏やかになられませー」


一希「誰だ?」

小梅「芳乃さん……わ、私のところの、事務所の人。多分、人……だと思う」


一希「……」

芳乃「さてー今一度みかなぎの舞を奉じまするー」



一希「この世のけがれはらいを生業にしてそうだな」

小梅「……うん」
122:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:29:09.37 ID:piWlzMOm0



芳乃「節目を分かつ儀式を捧げー、こちらとあちらそれぞれの幸せを守るとするはーこれわたくしの幸せでー」



唸る風が凪いでいく。――和いでいく。


和装の少女のステップが地に刻まれる度、邪な気配がたじろぎ、引いていく。



芳乃「ひー」

芳乃「ふー」

芳乃「みー」

芳乃「よー」




小梅「わぁ……っ!!」

一希「……」

小梅「すごい……ほ、ほどかれていってる……」

一希「解かれる?」




芳乃「いつーむーなーやー……」

123:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:29:58.03 ID:piWlzMOm0


ステップが緩やかに、闇の重みを減じさせていく。



芳乃「ここで鎮めたとしてもまた荒ぶることがあるやもしれませぬー。しかし、それでも此の度はこれにてー」



一希「……終わるのか」

小梅「……もしかしたら、と、友達に……なれたかな……」



芳乃「むむー?」

小梅「え……?」

芳乃「これはー……いけませぬ下がりませー」

一希「何?」



――ゴワアァァッッ!!!



一希「くっ!?」



……それは最後の荒ぶりか。

収まっていった唸りと殺気が、呪詛をまき散らすが如く猛り狂った。


ハロウィンの悪魔。

その存在は火車からわずかにずれている。西洋の文化とのコンボによって存在を高めたそれは、少女のけがれはらいに対しても抵抗する余地を残したのか……?

124:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:30:46.05 ID:piWlzMOm0


小梅「……これ、お、怨念……」


空間が軋む。邪気そのもののそれは、身をよじらせて災いをまき散らす。


小梅「あ、あ……!! だ、だめ。あの子……こっちに来かけてたのにまた、引っ張られて……」


展開が再びねじれ、巻き戻ろうとする。

……その時だった。



キリオ「そこな化け猫サン! 何が悔しくて迷って出たかは存じませんが、そなたも菓子屋の端くれならばお菓子を配ったらいかがでにゃんす? ほれ、とりっくおあとり~~とっ!」



一希「なっ」

小梅「はぇ……?」

芳乃「あらー?」



一希(あれは……彩の?)


唐突に、その男はやってきた。



そしてその最後の混沌は、この場の混迷にピリオドを打ったのだった。

125:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:31:27.60 ID:piWlzMOm0


キリオ「んん~、菓子屋でなくて火車とな? そうは言うがお前さん、こんなはろうぃんに出ておいて菓子を出さんというのは道理が通らないでにゃんすよ~!」


キリオ「お前さんは火車じゃなくて、菓子屋でにゃんす!」


キリオ「え、理不尽だ?」


キリオ「いやしかし御同輩! 度量が猫の額のように狭いお前さんが悪いでにゃんす! イタズラされてもいたしかたない!」


キリオ「そも、ワガハイにメーワクを掛けておいて! 自分だけイタズラ三昧とはこの猫柳亭とおてんとさまが許さんぞな!?」


キリオ「おいしいお菓子が無いんなら」


キリオ「新しい小噺になるでにゃんす~!!」




キリオ「はむり」



キリオ「ばくりっ」

キリオ「ずずずずず~~♪」





芳乃「なんとー……」

126:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:33:12.52 ID:piWlzMOm0



小梅「え……?」

芳乃「ほほー」




『……………………』




一希「これは――」




重みが消える。緊張が解ける。凍えるような空気がゆるむ――



場に満ちていたあの暗い圧倒感が完全に、消えた。




一希「なにを、したんだ」

小梅「あの和服のおにいちゃん……なだめて、小さくして……た、食べちゃった」

一希「食べた?」


キリオ「どうでにゃんす? ワガハイの扇子さばき! 本当に啜ってるが如きじぇすちゃ~でにゃんしょ!? これ、ワガハイの得意部門でにゃんす~!」

芳乃「そなたに宿る霊威で取り込まれたのですねー? 確かにこれなら魍魎と化すことはもうなさそうでありましてー」


一希(おれの言葉で火車の存在が揺らいだところを、あの和装の少女がその悪気を祓いさらに弱めた。そしてそこを――あの噺家がネタにして食らってしまった)

一希(そういうこと、なのか)


火車……菓子屋。


一希「言葉をかけて意味を変え、別の存在に。これが落語の地口というやつか?」
127:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:34:56.46 ID:piWlzMOm0


頭で設定を作る。

説明をするため理解できる論理を構築する。



……しかし、この場からはもうあの黒い気配は消えていて不意に馬鹿馬鹿しさが湧く。

急速に脳が冷めている。



一希(本当にハロウィンの悪魔はいたのか)


そんな事を思うほどに。




芳乃「さてー、ここのみなさまに気付けをいたしませぬとー」

キリオ「みなさまこんなところでひなたぼっことは豪気でにゃんすなぁ~。祭りといっても奔放過ぎるというものでにゃんす」


耳に届くのんびりとした声とのんきな声が、さっきまでの混乱の現実感をさらに奪っていった。

ただ風が吹いて、路地裏の影にそんなものがいたということにしていただけ。枯れ尾花との一人相撲。

座り込み、眠る彼らも、ただフェスタではしゃぎ疲れて、人がいない路地裏で一息ついて……予想外の疲労にそのまま眠っただけかもしれない。

多くの人がこんな所で同じように眠るというのには引っ掛かるが、路地裏で休みたいという心情はおれにはとても理解できるものだ。



存在と認識。それぞれの世界観。

128:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:37:26.07 ID:piWlzMOm0


――ああ、しかし。


結局おれが肯定したのは『なかった』よりも『あった』の方だった。




小梅「ごめん、なさい……」



小梅「わ、私が涼さん達を探すよう頼んだから、だよね。さらわれちゃったの……」

小梅「いつも頼りにしちゃってたから……私、一人になって、自分のコト、だ、ダメだったなぁって……思った……」

小梅「ごめんね。ごめんね……」

小梅「……もう、こんなことが無いようにするから……」

小梅「え……っ、うん。この世には、怖いコトいっぱいあるよね……」

小梅「な、無くならないよね、悪夢も、悲劇も……わ、わかってる、よ……」


小梅「でもね、そ、それでもね。私は……決めてるの……」

小梅「また同じようなことがあっても、私は、がんばって……絶対連れ戻す、って」


小梅「そ、そっちが、イヤじゃなければ……だけど」

小梅「どうかな……」

小梅「まだ、私と……いっしょに、いてくれる……?」

小梅「悪夢は……無くならないけど、その悪夢、これからもいっしょに見てくれる……?」

129:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:38:14.61 ID:piWlzMOm0


小梅「……」

小梅「…………」







小梅「あ――――!」








一希「……ふ」



おれは信じた。

見えないが、信じた。


彼女のほころんだ顔がもたらすこの幸福な気持ちを…………ウソにするのはあまりにもったいないと思えたから。





一希「笑顔か」



一希(……そろそろライブの準備の時間だな)

130:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:39:23.67 ID:piWlzMOm0


――

――――

――――――




「おい、見つかったって! いなくなった人たち!」

「え!? ホント!? 良かった……私の知り合いも友達がいなくなったってつぶやいてて……」

「あっちで警察が集まってて話聞いてるってさ! なんでも一か所に集まってたらしい。さらわれたとかじゃなかったんだ」

「なにそれー! ハロウィンの悪魔とか言って騒いじゃってさ、結局なんにもなかったんじゃん!」

「あんなの信じんなってバカらしい」








松永涼


星輝子




松永涼「小梅っ!! 心配してたんだぜー!? なにやってたのさ、一人でよ。困ってたんならもっとアタシら頼れっての!」

輝子「フヒ……そうだぞ、小梅ちゃん。……でも、さらわれたりされてなくて、良かったな……」

小梅「涼さん……輝子ちゃん。……うん、ごめんね。一人で勝手に行っちゃって……」

松永涼「今日のフェスタ物騒だったんだぜ。人が消えたとか。まぁ、さっき見つかったみたいだけどさ」

輝子「あ、あのトモダチは、見つかった感じか……?」

小梅「うん。今あの子は……涼さんの後ろに」

松永涼「なんだってっ!?」バッ!!


芳乃「うふふー。その子はいたずらが好きなようですが悪気は感じられずー。怖がることは無いのでしてー」
131:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:40:52.48 ID:piWlzMOm0



みく「あー芳乃チャン! 見つけた! ……って輝子チャンたちもいるっ」

輝子「お、み、みくちゃんだ……」

松永涼「おお、なんだこっちに来てたんだ」

歌鈴「よ、芳乃さん、あの、あの……い、一件落着な感じですか?」

芳乃「でしてー。この地に蔓延る悪気は一つに固まりー、小さくなりて、とある猫殿に平らげられましてー」

歌鈴「た、平らげた? 鎮めたという意味ですか? そ、それとも本当に?」

芳乃「ふふふー。よきぱふぉーまんすであられましたー」



翔真「ボーヤ。手伝ってあげたんでしょォ? 役に立ったかは知らないけどサ、とりあえずお疲れ様。いい心意気見せたわねェ」

キリオ「ありがとでにゃんす。と申しても、ワガハイはいいネタが拾えると思ってついてっただけでありまして~」

九郎「ネタって、あなたは……」

キリオ「ふっふっふ、さっきからワガハイの五感きゅぴぴぴ~んっ! と高まって、なんだかいいネタが浮かんできそうなんでにゃんす!」



秋月涼「一希さん!」

大吾「先生! なんじゃ、いっしょにおったんかい!」

一希「涼、大吾……」
132:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:41:31.20 ID:piWlzMOm0

松永涼「――って秋月涼か! アンタ!」

秋月涼「わっ!? そ、そうですけど……! あれ? あなたも、確かアイドルの……」

大吾「知り合いか?」

秋月涼「ううん。でも知ってるの。カッコイイ人だって思ったことあったから……名前同じだし。松永、涼さんですよね?」

松永涼「おお、アタシのこと知ってくれてんだ。へへっうれしいねぇ。アタシもまぁ、同じ名前だってことで知っちゃいたんだ。だけど、今はケッコウ真面目にアンタに注目してる」

秋月涼「え、そうなんですか?」

松永涼「ロックだよな、女から男に変わってさ! ハハッ!」

秋月涼「も、元々男なんですよ!?」

松永涼「知ってるよ。あの武田蒼一が見込んだ男、『男女の性差を越えた希代の歌い手』だろ?」

秋月涼「あ、武田さんの……」

松永涼「ボーカリストとしてさ、負けらんないって思ってたんだ。いつか同じ舞台で歌って勝負してみたいよ」

秋月涼「ボーカル……涼対決…………うん、いいですね! 僕、負けませんよ!」

松永涼「へぇ、やっぱ熱いの持ってんだな。……ま、それはともかく。そっち」


一希「おれか?」

松永涼「あんた、小梅といっしょにいたんだって?」

一希「……?」

松永涼「どういう関係?」
133:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:43:21.91 ID:piWlzMOm0


一希「……そうか、君は小梅というんだな」

小梅「あ……そ、そういえば、お、お互い自己紹介もまだだった……」


一希「では今しておこうか。……おれは九十九一希です」

小梅「……あ。私は、白坂、小梅です」


一希「よろしくお願いします……」

小梅「うん……よろしくお願いします」



みく「なんなのにゃ?」

大吾「なんか似てるのー。先生の妹と思ったわ」

一希「似ているか」

秋月涼「あー……はい! 雰囲気もどことなく同じような」

小梅「同じような死の香りがする……?」

涼「えっ!? 死の香り!?」

小梅「……ふふ、ジョーク……」

134:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:45:25.31 ID:piWlzMOm0

輝子「おお……! そ、その毒キノコの被り物、いいな……キノコ好きですか……?」

一希「キノコは好きだが」

小梅「じゃあ、今度いっしょに……じめじめしたお墓とか、行く? 手入れされてない所に生えてたりするんだ……」

一希「おれはまだゴーストに見えるか」

輝子「うー……ん。ダウナーな感じはします……あ、ヒャッハーとか叫んで、みますか……? キノコの力で」

一希「……検討はしておこう」

大吾「先生、クスリはやめといた方がええぞ。マジで」

一希「そんな話じゃない」


小梅「……わかった」

一希「なに?」

小梅「おにいちゃん……一希さん、あんまり笑わないからゴースト感あるんだ」

大吾「お! そうじゃの! ワシは先生はもっと笑わんといけんと思うとった! ムリをさせるのもあれじゃったから強くは言ってこんかったが!」

一希「……笑う? これでも、結構笑っている……」

大吾「もっとはなまる笑顔でいかんと!」


小梅「笑お……ほら、にぃー……」

一希「ムリに笑うと、カワウソみたいな顔になる」

小梅「カワウソ……みたいなちょっと怖いスマイル……み、見たいな……」

一希「やめてくれ」

大吾「なんじゃ先生! 笑顔じゃ笑顔! ワシがやり方教えたるけぇー!」
135:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:46:22.50 ID:piWlzMOm0

一希「――」

小梅「……、……」

大吾「――――!!」

輝子「フヒ……」




松永涼「うーん、よくわかんないな。イマイチキャラが掴めない」

秋月涼「一希さんは僕の仲間で……やさしくていい人です!」

松永涼「そっか。そんなら――安心しとく、か。 難しいこと考えんのは無しだ、もう」

みく「そ、だよね! わからないこと考えても意味ないよね! ホラーとかオカルトとか意味ワカンナイにゃ!」

松永涼「ん? なんだ、なんでホラーとかオカルトの話になったのさ?」

歌鈴「あはは……今日のこのフェスタ色々あって……」



一希(そんなにおれのぎこちない笑顔が見たいのか)


一希(しかし、カワウソか)



そう言えば。

カワウソでも河童と猫は繋がるんだったな。魍魎に繋がる素因となる。

“水場にいる猫”としての、カワウソ。

佐渡・能登半島ではカッパのことを“カワウソ”と呼んでいた。人を騙して水に引き込む伝承もある。


魑魅。山の怪。猫魈。火車。くわしや

魍魎。水の怪。罔象女。河童。くわしや


一希(その行きついた果てが“菓子屋”か。ずいぶんやさしい存在に変わったな)
136:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:48:32.62 ID:piWlzMOm0

歌鈴「あの……芳乃さん」

芳乃「はてー?」

歌鈴「質問いいでしょうか~? 溜まった邪な気の発露というのはわかるんですけど、どうして今回それは化け猫、くわしやって形を取ったんでしょうか?」

芳乃「ふむー……怪しげな気は地よりあふれ出ずるもの、また、天より流れくるものでしてー。その表情がいかなる形を取るかはわたくしでもー」

一希「完璧にはわからないのか。……魑魅にも魍魎にも繋がる最小公倍数だからだろうか」

歌鈴「そうですね。それか……お菓子をくれなきゃいたずらする、なんて、物盗りみたいな文句をみんな言い続けたから、罪人を連れていく妖怪の形になった……とか?」

芳乃「神様は人の想いを享けるものでしてー、そしてそれは妖も同じでありー。人の気がそのように化けさせたのでしょうー」



芳乃「やはり、キリオ殿の奇怪な気配がーこの場にわだかまった悪気に雫を垂らしー化け猫の形を与えたのやもー」

キリオ「にゃっ!? またワガハイ!? 猫チャンを装うあいどるはワガハイの他にもおりまする~!」

みく「え、なにみく!? みくはなにもしてないよっ!? ハナシ分かんないしっ! そう! そうにゃ! ……も、もっと女の子っぽいキュートなハナシをしよっ!? ねっ!」

137:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:49:57.70 ID:piWlzMOm0

一希「一つが理由じゃないんだろう。色んな理由(ワケ)があって、今回はそんな風に化けたとみるべきだ。『ハロウィンの悪魔』として設定した人達が力を持たせてしまったのだろうし」

芳乃「でしてー。みな、一つ所に留まらず化けるものでしてー。だからこそ名を与え、言霊でくくるということが意味を為したのでー」

歌鈴「……そうだったんですね」

芳乃「……しかし、今回のそれはとても凄まじくー」

歌鈴「め、めったにここまで強いのはないらしいですね?」

芳乃「ええー。この世の理がずいぶん揺らいでいると感じられましてー。もしかしたら別の世と繋がってしまっているのやもー」

みく「え、今度は異世界の話? もーファンタジー好きなんだからー芳乃チャンはー!」

小梅(あ……っ。……別の世界……空……ふふ……)





芳乃(この世もー芸能界もー、汚れを掃除する、けがればらいが必要になっているのかもしれませぬー)

138:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:50:46.91 ID:piWlzMOm0


秋月涼「それじゃ大吾くん、一希さん。そろそろ行きましょうか!」

大吾「おう! 全員そろって、いなくなったちゅう人も見つかって、気がかりがのうなってええ気分じゃ! 後はお客さんを笑顔にするのに全力を注ぐだけじゃな!」

一希「ああ……行こう」

秋月涼「体調は大丈夫ですか?」

一希「……いい気分だよ。心配をかけたな。もう大丈夫だ二人とも」

大吾「はっは! 良かった良かった!」


松永涼「お、ハロウィンライブに行くんだな。魅せてくれよ?」

秋月涼「はい! がんばります!」

九郎「よきステージになるよう、祈っております」

大吾「ははは、ありがとうさん!」


小梅「あ……行っちゃうんだ……」

輝子「あの人達も……アイドルだしな……」


小梅「……」


小梅「あの」

一希「どうした小梅?」

139:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:51:47.03 ID:piWlzMOm0


小梅「ありがとう、ございました……手伝ってくれて、そ、それと信じてくれて……」

一希「……構わない。おれも非現実的な話は好きだったから。貴重な体験だった」

小梅「……そ、そうだよね……! あの路地裏、すごくぞくぞくして、ぞわぞわして、あっちの世界と近い感じがして……足を踏み外したら落ちちゃいそうなくらいの怖さで……!」

一希「…………」


小梅「も、もう一回くらい、ああいうところに、行ってみたいよね……ふふふ……!!」

一希「……ふっ」

一希(すごいな、この子は)


一希「そうだな。次があるなら誘ってくれ」

小梅「うん……!」

一希「ライブ、見に来るか。席なら多分まだ……」

小梅「行って、いいの……!? うん、見に行く……! あの子も見たいって……」

一希「そうか。一夜限りの饗宴だ。楽しんでいってくれ。『二人とも』」

小梅「うん…………!」

一希「じゃあ行ってくる」


小梅「あ、あの……ステージの上で、どんな風に変わるのか、見てるから……」

一希「ああ。……九十九一希を見ていてくれ」

140:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:52:32.77 ID:piWlzMOm0

――……



小梅「……わたし、ライブ行ってくるね」

松永涼「ここんとこ、見る方になってなかったな……小梅! いっしょにいこう」

小梅「涼さん……う、うん……! ありがとう……!」

輝子「お二人さんー……ぼっちにしないでくれー……」

小梅「うん……輝子ちゃんも、もちろん行こ……!」



翔真「……清姫だって蛇に化けるし、女だって男に変わる」

キリオ「で、にゃんすね~。じょぶちぇんじは人の可能性なり~!」

翔真「なってやるって意気込み。誰かのためになろうとする意思。人もまた想いがあるから変わっていくのねェ」

九郎「まことに含蓄あるお言葉です」

翔真「F-LAGSもそれぞれにさ、色々あった過去があるみたいじゃない? だからちょいと心配だったのよね。同属みたいで」

キリオ「315プロはおかしな人材の宝庫でにゃんすからね~」

翔真「そう。だから仲間って思えるし、心配にもなるわけ。でも……今、安心したわ」

九郎「どうしてでしょうか」

翔真「みんな、人のために自分のために変わろうってまっすぐ決意してる顔してたからよ! こりゃあ、どういう舞台か拝んでおかなくっちゃね! 行くわよォ二人とも!」

九郎「ええ!?」

キリオ「いざゆかん~! 同じ事務所の仲間の晴れ姿! 目に焼きつけて……芸の足しにするでにゃんす♪」

翔真「あははっ! いい強かさじゃないボーヤ!」


芳乃「ふふふー。みなみな笑顔になられませー」

141:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:53:14.68 ID:piWlzMOm0






…………

………………



涼「じゃあ、行こうか! 二人とも!」

大吾「気合い十分じゃな涼!」

涼「うん……今日はいつもと違う姿を見せようと思ってるんだ! 友達も見に来てくれてるし」

大吾「いつもと違う姿か。涼はすごいのおー。そのいつもがもう十分すごいっちゅうんに」

涼「まだまだ、挑戦しなきゃいけないことたくさんあるよ。うまくいくかは、わからないけど……変わっていこうって決めたから」

一希「変われるさ」

涼「一希さん?」

一希「きっとうまくいく。……サポートは任せろ」

涼「…………はい! ありがとうございます!」


涼「でも――大吾くんも一希さんも、どんどん前に出てくださいね!」

大吾「おう! ええとこみせたる!」

一希「…………」

大吾「先生?」

涼「え、なにか……」


一希「いや気合いを入れた。――――おれも、変わった自分を見せるよ」

涼「はいっ!」

大吾「ええぞ先生! そんじゃあ行こか!」
142:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 14:55:11.45 ID:piWlzMOm0


ワァアアアアアアア――――



歓声が上がる。

ハロウィンの長い夜が始まる。



ハロウィン…………変わるにはうってつけの日。

今日は季節の節目、物事が変じる日だ。




――『幽霊だって……、違う、なにかに変われるよ』



一字一句覚えた言葉が背中を押す。


大丈夫。進める。

光が見える。



一希(さぁ、変わろうか)






おれを見てくれる人たちのために。







完!


143:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 15:08:36.55 ID:piWlzMOm0

完結です。100%趣味で書かれたSSです。
いやどれほどガッツリ書いたらいいかわからず苦労した……
最後までお付き合いしていただけていれば幸いです。



クロス系過去作

橘志狼「よーしっ公園で自主練だ!」橘ありす「私たちが使う予定なんですけど」
橘志狼「顔面セーフっ!!」橘ありす「アイドル的にはアウトですよ」
橘志狼「ありすっライブのチケットくれ!」橘ありす「なんの冗談ですか」
橘志狼「早押しは得意だぜっ!」橘ありす「正解しないと意味ないですよ」
橘志狼「チョコ貰ったかって?」橘ありす「昨日の私はまさか渡していませんよね?」

村上巴「駒落ちは無し」岡村直央「真剣勝負……です」


塩見周子「誕生日に」東雲荘一郎「想を練る」

塩見周子「荘一郎さーん、約束のケーキっ!」東雲荘一郎「わかってますよ」


櫻井桃華「あら、あなた忘れ物をしておりますわよ?」 都築圭「ごめん、静かにして」

榊夏来「……猫?」佐城雪美「うん……ねこ」

渡辺みのり「シンデレラガール総選挙だよっみんな投票してッッ!!」

城ヶ崎莉嘉「夏休みだーっ!」秋山隼人「虫捕りに行こう!」



北斗「趣味はヴァイオリンとピアノかな☆」
愛「『秋月涼』対『水谷絵理』」



CD第8弾の面子が無視できない方ばかり……。
それと今回のカフェパレのイベント良すぎますね。東雲さんの掘り下げがあった時に周子さんのことも分かって、重ね合わせそうになりました。

デレステのコミュも気になるのが多く、彩・FRAMEにも声がついて驚きましたし、
いよいよ各陣営のライブも始まるので処理が全然追いつかない。そしてこのような状況がとてもうれしいです。もっと盛り上がれー
144:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 15:10:48.21 ID:piWlzMOm0
あとSideMの新アイドル候補の忍さん。ホラー映画見るのが好きて……しかも紹介が九十九先生って、なに、狙い撃ちですかおれを
雨彦さんも猛烈に気になります
145:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/22(日) 15:14:27.95 ID:YHYVY1OKo
乙乙、面白かったです
デレのCDデビューやFRAMEの声とかいいね!
147:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/23(月) 00:22:51.24 ID:Qf0eh1vX0

相変わらず読み応えあって面白かった
お奨め記事
11月23日 10時00分|Mマス,モバマス0コメント

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